ごみだらけの環境で弟を世話、誰にも相談できなかった ヤングケアラーの多くが孤立

福井県のヤングケアラー実態調査

 福井県立高校の1年途中までヤングケアラーとして弟を世話した20代のリサ(仮名)。中学から付き合う友人に過去を明かすと「全く知らなかった」と驚かれる。当時は近所付き合いがなく、同級生にも学校にも真実を隠していた。

 友人が家に来ても「玄関で迎え、すぐ外へ出た。絶対に中へ入れなかった」。ごみだらけの環境で弟を世話する現実は「恥ずかしく、ばれてはいけないもの」だった。

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 無気力感に襲われ学校はよくサボった。弁当の持参が必要な日は、料理をしない母に「休みなさい」と言われた。そんな時、「世間体だけは気にする」母が必ず学校に風邪をひいたと伝えた。担任の家庭訪問でも、見える範囲だけ整頓した玄関先で無難に応じた。学校も、福祉機関も、家出した際の対応に当たった警察も、実態に気付くことはなかった。

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 誰にも相談できない-。当事者の孤立は、多くのヤングケアラーに共通して見られる特徴だ。

 福井県が2021年9、10月に初めて行った中高生(ともに2年生)への実態調査によると、「家族を世話している」との回答は4%前後(高校は全日制)と、少なくとも1クラスに1人から2人いる結果が出た。このうち約6割が「誰にも相談したことがない」と答え、「今の状況について話を聞いてほしい」「将来の相談に乗ってほしい」などと孤独感をあらわにする回答も一定数見られた。

 日本ケアラー連盟理事の中村健治さん(北海道社協)は言う。

 「日本では世帯人数が縮小したのに、いまだに家庭内のケアは家庭でとの固定観念が根強く、18歳未満が担い手になる例が増えてきた。子どもたちは発覚を恐れたり、世話を当たり前だと思い込んだりする傾向がある。事情も知らずにヤングケアラーを『家族思いの偉い子』と美化する考え方もあり、人知れず悩みを抱えてしまう」

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 現在、リサは働きながら子どもを育てるシングルマザーとなった。母とは7年近く連絡が途絶えている。「もう会うことはない」

 弟2人と過ごした10代。悪臭の漂う部屋で時折、父親が欲しいと強く願った。3歳の時に両親が離婚したから、顔も声も知らない。「もしお父さんがいたら、違ったんだろうな」。話を聞いてくれ、信頼できる大人を求めていた。

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