【寄稿】スマートパチスロ登場前夜に(WEB版)/POKKA吉田

9月1日に日工組榎本理事長、日電協兼次理事長の連名でプレスリリースが出たことはみなさんご存じだろう。11月21日がホールにおける営業の解禁日ということになっている。この手の解禁日の制限をかけるのは大きくは二種類あって、一つは「規制強化」のときとその反対のとき。今回はもちろん初のスマート遊技機登場ということであり、ポジティブな話としての解禁日設定だ。

個人的な話をすると、7月19日のスマート遊技機フォーラムにパネルディスカッションのコーディネーターとして登壇した者として、この日を境にスマート遊技機に対するホールの期待感が急激に高まったことについてありがたく感じている。それまで、おそらくはサイレントマジョリティは「様子見」であっただろうスマート遊技機について、むしろ先行して導入した方がいいと思うホール法人が急増したのはフォーラムの関係者としては目的達成なので素直に嬉しい話だ。

一方、スマート遊技機はホールが導入したいと思ったところで導入できるものではないことはみなさんもご承知のとおりである。まずはユニットの争奪戦。これは遊技機メーカーからみたホールの取引ランクとは異なっており、ユニット業者からみたホールの取引ランクが左右する。たとえば最大手はゲームカードとなるだろうが、ゲームカードのユニットがなくても別の業者のユニットがあればホール営業は成立する。遊技機の場合は大ヒット機はなかったらホール営業が成立しないことを考えると、一見すれば大手有利と思いがちだが、必ずしもそうではないわけだ。あくまでもユニット業者の個々の視点での取引ランクの優劣がまずはユニット争奪戦を左右する。

ユニットが手当できればそれで安心か、といえば全くそうではない。次にこれもマストで必要なサーバがあるが、モノが足りないという話も聴こえてくる。スマート遊技機は当たり前だが外部でのデータ管理が前提であり、そのデータ管理が射幸性抑制に役立つということであり、射幸性抑制になるのであれば依存対策に資するということで現行規則から許容されたものだ。サーバがなければ営業は不可となるわけだが、これにも争奪戦がある。ユニットだけ確保できたら「もう導入できる」と思うのは早計となるわけだ。

また、遊技機そのものも当然ながらないと営業はできない。プレスリリースで発表された4メーカー4機種については、見込みとしてはトータル7万台ほどの販売台数だそうで昨今のご時世としてはかなり製造して販売される。が、それでも7万台だ。100万台市場とすれば10%に満たない供給であり、それが大注目ということなのだからやはり需給逼迫ということになる。

絶対的な供給側の事情(不足)もあるため、スタートからじわじわ導入が増えていく、ということになりそうである。ただ、これは現在進行形で全国のホールが今経験している真っ最中であろう。6.5号機そのものが台数が不足している。鬼武者や犬夜叉のおかげで7月以降のホールの業績は驚くほどに良化している法人が急増しているが、これらの人気機種は台数がまだまだ足りないわけだ。拙宅の近隣でも1台や2台の導入が多く、たまに店を覗いても空き台があるはずもなく、まだまだじわじわ設置台数を増やしている段階というのが6.5号機の現状だろう。

6.5号機が足りないということで続々と新機種群も含めてこれから設置台数を増やしていく。その流れでホールの業績がかなり回復するという時期に、今度はさらに期待できるスマートパチスロが登場するわけだ。そりゃ、早く導入できるに越したことはないが、遅れて導入、なんなら年内に間に合わなくとも同じような条件の店は全国的に多発する。だから、気持ちははやるが焦らず可能な範囲で導入に向けて努力してほしいところだ。

ところで、業界全体の苦境というのはトレンドとしてまだ残っているが、6.5号機の台頭で目に見えてホールの業績が復調気配となっているのは良い話である。良い話すぎて気が付かないが、同じ業界の職域によってはまだ絶不調の職域がある。それはパチスロ販売業者ということになる。

業界の苦境の原因が6号機の不振だったことは間違いなく、その6号機が復調気配なのだからホール業績もメーカーの業績もこれから復調気配が具体的に明らかになってきた。だが、6.5号機の供給台数がまだまだ需要に応じきれておらず、その結果、簡単に言えば販社に6.5号機の有力新台が割り振られていないわけだ。となると、ホール業績に比例しているわけではない販社の売上にとっては影響はなく、苦しいまま、ということになる。

直販が機能しているメーカーはとても多いというか大多数なのは事実だが、全国すみずみまで直販がケアしているというメーカーはこれまた皆無に近いくらいに少ないのも事実だ。たとえば東京とか大阪、名古屋のような大都市圏には直販の営業所が普通に機能しているものであるが、地方になればなるほど営業所の維持コストだけでもばかにならず販社に委ねられるというのも実態である。今は供給台数が圧倒的に足りないことから販社に6.5号機の恩恵がいかないのが現状であるが、これは徐々に緩和され、少なくとも年内にはある程度販社職域にも恩恵が伝わっていくような状況になってほしいと切に願っている。というのも、業界の大苦境のこの何年ものあいだ、最も苦しかったのはパチスロ販社であるというのが私の見立てだからだ。最も苦しい業界職域に光が差したとき、初めて「業界の苦境からの脱出」が実現という運びになる。だから今、ホールの業績復調気配で「良かった」わけではなくて「本当に良かったという状況になれるように、各職域で努力してほしい」という途上だという認識を我々は共有しておきたい。

いずれにせよ、6.5号機の成功、スマートパチスロの登場前夜ということで、業界全体の雰囲気は業績的にも精神的にも良化していく経過を見せてくれている。もちろんもともと現行規則機に性能規制的な不安がないP機もあるし、スマートパチンコは来年春に登場するわけだ。昨今、極めてありがたいことであるが、PSともに「近いうちにさらに業況が良くなる」という明らかな見込みが控えているという状況は向こうどれくらいだろうか、少なくとも5年間はなかったくらいである。

争奪戦に挑み負けて先行で導入できなくとも、6.5号機の導入をすすめて業績を回復させる手段等がかなりある。もちろん半導体等の部材調達難もあって供給側の事情はいかんともしがたいわけだが、それでも少しずつでもモノは出てくる。それを少しずつでも設置していき、業績を回復させてパチスロ販社職域も含めて業界内職域総じて業況回復、という状況を我々は実現していきたい。というか、そうなってもらわないと困る。

私もみなさんもともに、業界関係者、すべてで良化を感じさらに波及させていく力になっていきたいと思います。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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