珍しい生物に関する論文に貢献 相浦中の理科教師、金子さん 英専門誌に掲載 長崎

採取した「ヤマタロウヤドリツノムシ」の写真を紹介する金子さん=佐世保市内

 鹿児島大などの研究チームがまとめたカニ類と共生する珍しい生物に関する論文が、英国の生物専門誌のオンライン版に掲載された。この研究チームには佐世保市立相浦中の理科教師、金子卓磨さん(27)=同市出身=も参加しており、「苦労した結果が世界の人に発信されるのは、報われた気がして素直にうれしい」と喜びを語った。
 この生物は、鹿児島県垂水(たるみず)市と同県肝属(きもつき)郡肝付町の河川上流から中流域で、ミカゲサワガニとモクズガニの体表から見つかった。1~5ミリの微小な扁形(へんけい)動物、截頭(せっとう)類の一種。約10年前に同大理工学域理学系の上野大輔准教授(41)らが研究を始め、ヤドリイツツノムシ科ヤドリイツツノムシ属の種で、東南アジアに分布する近縁種と似た別種であることが判明。研究チームが「ヤマタロウヤドリツノムシ」と命名した。新種の可能性があり、今後さらに研究を進め生態を解明していく。

ヤマタロウヤドリツノムシ(上野准教授提供)

 論文は、上野准教授と、当時同大大学院生だった金子さんらに加え、いおワールドかごしま水族館、かごしま環境未来館の共同研究の内容をまとめたもの。上野准教授が第一著者として執筆し、8月に英国の生物専門誌「Journal of Helminthology」に発表した。上野准教授は「どういう生き物か全く分からないところからのスタートで大変だったが、知的好奇心が刺激されて楽しい10年だった」と振り返る。
 金子さんは、同大理学部3年の後半から上野准教授のゼミで同生物の調査、研究を開始。同大大学院理工学研究科に進んで研究を深めた。生物が付着するカニ探し、生物発見後の解剖に加え、電子顕微鏡での形状や体内の構造観察なども行い、昔の論文やそれまで採取した個体と比較。既存の種と一致するかを調べるなど、分布調査と形態観察、分類研究を担当した。金子さんはこの生物の魅力を「つぶらな瞳と、たこさんウインナのような5本の足」と話す。
 卒業後は帰郷し教師に。今年4月に上野准教授から論文掲載決定の連絡を受けた。「長崎北部でこの生き物の研究はしていないので、今後調査したい」と目を輝かせた。


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