那須特別支援学校の寄宿舎存廃 埋まらない県教委と保護者の溝

那須特別支援学校に併設された寄宿舎=2月下旬、那須塩原市

 栃木県教委が本年度末での閉舎を決めた那須特別支援学校(那須塩原市)の寄宿舎を巡り、存続を求める保護者らと県教委との溝が埋まっていない。県教委は2度の説明会を開いたが、議論は平行線をたどった。保護者らは存続に向けた署名活動を行うとともに、今月15日には閉舎計画の一時停止を求める陳情書を県議会に提出。閉舎の期日が半年後に迫る中、存続への願いを県議会に託した。

 「子どもたちの成長や発達を、丁寧に支援する貴重な教育の場」。保護者らが提出した陳情書には、寄宿舎や子どもへの思いが切々とつづられた。

 陳情ではこれまで求めてきた「存続」ではなく、「計画の一時停止」の要望にとどめた。保護者でつくる「おき火の会」前会長で、陳情者の菊池忍(きくちしのぶ)さん(48)=大田原市=は「まずは話し合いの場を持ってもらうことを第一に考えた」と説明する。

 那須と栃木の特別支援学校の寄宿舎閉舎が発表されたのは、昨年11月2日。県教委は施設の老朽化や遠方に住む通学困難者の減少などを理由に挙げたが、那須特別支援学校の保護者らは今年2月、県教委に存続を求める要望書を提出。3、5月には同校で説明会が開かれた。

 在校生や卒業生の保護者らは「那須は学区が広く通学困難は解消されていない」「福祉施設などでは代替できない」と反対。一方、県教委は「スクールバスを増やし、乗車時間が他校と同水準の60分以内になるよう配慮する」「生活指導は授業でも行っており今後は一層の充実を図る」などと理解を求めた。

 寄宿舎は学校教育法で併設が義務付けられているが、県教委は「法律の趣旨の中で、通学困難な児童生徒のための施設と位置づけられている」と主張している。

 保護者らは大田原、矢板、那須の各市町議会に寄宿舎の存続を求める陳情を提出し、いずれも採択された。那須塩原市議会では陳情を不採択とした一方、利用者らへの誠意ある対応などを求める意見書が可決された。署名運動では現時点で1万8千人以上分が集まっているという。

 開会中の県議会9月通常会議一般質問でもこの問題が取り上げられ、福田富一(ふくだとみかず)知事が県教委に議論を深めるよう促した。県議会への陳情は29日、文教警察常任委員会で審査される見通しだ。

 【ズーム】那須特別支援学校の寄宿舎 1978年に学校に併設して設置された。遠方に住む通学困難者の教育保障を目的としていたが、通学困難者の減少に伴い教育的な理由の入舎も受け入れてきた。毎年のように定員(26人)を超える入舎希望がある。22年度の利用者26人のうち、通学困難者は3人。

© 株式会社下野新聞社