高地でナラ枯れ目立つ 和歌山県、最近の異常気象要因か

ナラ枯れの影響で葉が茶色くなったミズナラ(和歌山県田辺市龍神村で)

 ドングリを実らすブナの仲間が枯死する「ナラ枯れ」が、和歌山県紀南地方の平地でほぼ収束する中、護摩壇山(1372メートル)やその周辺の高地で目立ち始めている。県林業試験場(上富田町)は「最近の異常気象が、標高の高い地域への被害を拡大させている可能性がある」と推測している。

 ナラ枯れは、甲虫のカシノナガキクイムシ(カシナガ)が木に侵入して発症する。護摩壇山森林公園管理人の湯川明夫さんによると、昨年までナラ枯れの木は見られなかったという。「今夏から目立ち始め、特にミズナラの太い木が被害に遭っている。これ以上広がらなければいいが」と心配する。

 県林業試験場によると、一般的に標高千メートルを超えると低い気温によってカシナガの繁殖率は低くなるとされる。今回発生したナラ枯れは、周辺の標高の低い地域から移動してきたカシナガによる可能性があるという。

 その要因として、冬季の気温上昇に伴いカシナガが繁殖できる標高が上昇した▽周辺地域でのカシナガの生息密度が上昇した▽周辺地域で被害に遭っていない太い木が減少し、新たな太い木を求めてさらに標高の高い所へ移動した―などの可能性を挙げている。

 研究員は「被害の増減が全国的に連動していることから、気象条件が影響していると考えられるが、詳細は分かっていない。昨今の夏場の高温と乾燥で樹木の耐性が弱くなっている可能性もある」としている。

 県ではナラ枯れの対策を考えるため、毎年状況を調査しており、今年も11月ごろに結果が出る予定。県森林整備課によると、紀南(田辺市、みなべ町、上富田町、白浜町、すさみ町)の平地では2012年ごろに加害が始まり、19年ごろにほぼ収まっている。被害地域では5年ほどで落ち着くとみている。県林業試験場では国の機関と協力しながら、防除の研究を進めている。

 カシノナガキクイムシ 成虫は体長5ミリ程度。体に付着している共生菌「ナラ菌」が樹木を弱らせ、やがて枯死させる。被害木の根元には大量のフラス(木くず)が出る。県内では1999年に旧熊野川町で確認されて以降、北上したものと、近年日本海側から南下してきたものが合わさる形で全域に広がった。

被害木の根元にたまったカシノナガキクイムシが出した木くず(和歌山県田辺市龍神村で)

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