厳かで幻想的な「山口薪能」 10月2日に野田神社能楽堂で能「紅葉狩」など上演

 10月2日(日)午後5時から、「山口薪能」が野田神社能楽堂(山口市天花1)で開催される。8時終演予定。主催は福岡能楽大連吟実行委員会で、山口能楽堂運営委員会が共催する。

 かがり火の炎が照らし出す能舞台で演じられる薪能は、厳かで幻想的。パチパチと薪の燃える音、虫の声、風の音、炎の揺らめき…。その幽玄な世界・空間は、会場でしか感じられない特別なものだ。

 最初の演目は、能「弱法師」(よろぼし)。河内国高安(現在の大阪府八尾市付近)に住む高安通俊(たかやすみちとし)は、他人の讒言(ざんげん)を信じて、実子の俊徳丸(しゅんとくまる)を家から追い出した。後悔した通俊は、俊徳丸の現世と来世の安楽を願い、春の天王寺(大阪・四天王寺)で7日間の施行(施しにより善根を積む行)を営む。その最終日、弱法師と呼ばれる盲目の若い乞食が施行の場に現れた。その弱法師は俊徳丸その人だった…。シテ(主役)を務めるのは、観世流能楽師の今村嘉太郎。祖父と父が重要無形文化財保持者という能楽師の家に1980年に生まれ、2歳半で初舞台。現在、福岡を拠点に各方面で活躍中だ。清らかで美しく、それでいて寂しく悲しい盲目の青年・俊徳丸を初めて舞う。「春の麗らかな季節の物語、親子の対面や現状を恥じる姿などが見どころ」と主催者。

 「弱法師」終演後の「火入式」に続き、狂言「文山立」(ふみやまだち)が上演される。山賊2人が仲間割れし、果し合いとなる。だが「見物人もいないのでは犬死になる」と、妻子に遺書を書くうちに仲直りするという筋書きだ。シテは、大蔵流狂言の山本則秀。

 最後の演目は、能「紅葉狩(もみじがり)-鬼揃(おにぞろえ)」。高貴な風情をした女が侍女を連れ、山の紅葉を愛でようと宴を催していた。そこに鹿狩りの途中の平維茂(たいらのこれもち)の一行が通りかかり、道を避けようとするが、女たちに「是非ご一緒に」と誘われ、宴に加わる。この世の者とは思えぬ美しさの女に酒を勧められ、つい気を許した維茂は酔いつぶれ、眠ってしまう。それを見届けた女たちは姿を消し…。主催者は「女の正体は実は鬼で、維茂一行が八幡大菩薩から下された神剣を使い退治する。今回は、『鬼揃』という小書(こがき=特殊演出)での上演。通常よりも派手な演出になるので、初めて能を観る人でも十分に楽しめると思う」と鑑賞を呼びかけている。シテは、今村嘉太郎の弟の今村哲朗が務める。

▲「紅葉狩」の一場面

 入場料は、S席(正面)8000円、A席7000円、自由席5000円(学生2000円)。前売券は、YCAM(山口市中園町7)で購入できる。問い合わせは、TEL080-5789-1132へ。

 また、現地での鑑賞ができない人に向けて、有料での動画配信も予定されている。視聴料金は2000円で、配信期間は10月5日(水)午後5時半から同11日(火)まで。ウェブサイト(https://tiget.net/events/193398)から購入でき、期間中は何度でも視聴することができる。

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