「人生100年時代?」今、議員定年制を考えてみる(オフィス・シュンキ)

8月末に日本維新の会、9月末に公明党と、国政政党の代表選出が行われる党大会が行われました。ともに「新しい代表が選ばれるのか」が春先から注目されていた党大会でした。どうなったか、の結果はともかく、同じ体制が長く続くことの是非を政党内で考慮したものであったのは確かでしょう。党の代表に限らず、高齢になっても同じ人物が選ばれ続けることへの功罪からたびたび話題に上がるのが「議員定年制」の是非です。

公明党は国政政党の中で数少ない議員定年制を導入している政党です。公明党の広報部によると「内規で決められています。元々『任期中に66歳を超える場合は原則公認しない』となっていたのですが、2013年の内規変更で『任期中に69歳か在職24年を超える場合は原則公認しない』となりました。それが現在も国会、地方議会問わず適用されています」とのことでした。今回の党大会でも議題に議員定年制の見直しは出ておらず、予定されている次の大きな選挙、来春の統一地方選はこのままの内規で臨むことになります。

議員定年制の存在が大きくクローズアップされたのは約20年前の2003年までさかのぼります。この年に行われた衆議院議員選挙で自由民主党の内規が時の小泉純一郎首相(自民党総裁)によって厳格に適用され、元首相の宮沢喜一氏、中曽根康弘氏らが政界引退となったのです。その内規とは、「衆議院比例代表候補に関して、73歳以上は原則公認しない」というものでした。この内規はあくまで比例代表単独に関してであって、重複する場合や小選挙区だけでの出馬となれば実は適用されないのですが、それでも自民党の議員「73歳定年制」が一般的に定着しているのは、2003年の衆院選の首相経験者2人の引退の影響が大きいといえるでしょう。

一方、参議院については、自民党選挙対策本部によると「比例代表候補の70歳以上は原則公認しない、となっています」とのことでした。一瞬「えっ?」と思ったのですが、「支持団体の推薦などがあれば特例を認める、という規定も参議院の比例代表にはあります」とのことで、参議院の方は「特例を認める」が明記されていることにより、「70歳定年制」がほとんど表に出てこないことも分りました。

日本の国政政党の中で、はっきり議員定年制をうたっているのはこの2つです。ただ、自民党の選挙対策本部の方は「いろいろな意見が党内で出ているのは承知しています」とも話しました。議員定年制が必要かどうかについて、「廃止」「厳格に適用」の両方の要望書が党執行部に提出されているようです。

しかし、メディアがこの自民党内の論争を取り上げるのと裏腹に「今まで内規を変えようといった議題が正式に党大会などで取り上げられたことはないですし、今もそういう話は全く聞いていません」と自民党の担当者は話しました。さらに、これは国会議員候補に限られており、地方議員に関しての規定はありません。よって公明党のケースとは異なり、自民党は来春の統一地方選挙では党内規の議員定年制の影響は全く受けません。

党代表の交代で話題となった日本維新の会の議員定年制の担当部署となる「政務調査会」の担当者の方に話を聞いてみると、逆に「どんな科学的根拠があるのでしょうか?」という問いがまず返ってきました。「議員定年制でいわれる『定年』の根拠が全く示されていません。私たちには、86歳になっても活躍されていた片山虎之助前共同代表のような方もおられます」と明確に議員定年制の必要性を否定されました。加えて「片山前共同代表は病で倒れる直前まで、質問もすべて自分で考え、自分で作っておられました。加齢による衰えとかは人それぞれじゃないでしょうか?」と、ダメ押しの意見もいただくことになりました。

実はこの議員定年制、欧米では設けないのが主流となっています。最近でも昨年1月に78歳でアメリカ大統領となったジョー・バイデン氏をはじめとして、年齢を重ねてもしっかり活躍される政治家がいることがはっきり示されています。日本でも、英国のリンダ・グラットン教授の著書から提唱された「人生100年時代」というキーワードが注目され、年齢で区別することの善し悪しが言われるようになってきているのは事実です。

さらに付け加えるならば、作家でタレントの乙武洋匡氏がTwitterで発している「衆院なら25歳未満、参院なら30歳未満には被参政権が与えられていない現状にも言及しないと」という意見も上げさせていただきたいところです。「議員定年制」の議論は今後も続くと思われますが、年齢を言うのであれば同時に被選挙権の年齢も今までのままでいいのか、真剣に考えていく時期に差し掛かっているのも確かではないでしょうか。

(オフィス・シュンキ)

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