相模原市の自衛官募集事務、名簿閲覧から提供に変更 「住民情報の正確性保持するため」

相模原市役所

 自衛官募集業務を巡り、相模原市が本年度から自衛隊の求めに応じて対象者の名簿(宛先シール)を提供していることが27日、分かった。昨年度までは個人情報保護の観点から公開を制限する住民基本台帳法や市個人情報保護条例を踏まえ、住基台帳の閲覧にとどめていた。市は名簿提供について「住民情報の正確性を保持するため」と説明するが、個人情報に詳しい弁護士は「法的根拠は薄弱」と市の対応を疑問視する。

 自衛隊は自衛隊法に基づき、自治体に対して入隊対象者となる住民の氏名や宛先を記載した名簿やデータの提供を要請しているが、自治体に提出義務はない。

 一方、住民基本台帳法は、国または地方公共団体は法令で定める事務の遂行のために必要である場合に限り、住民基本台帳の一部の写しを閲覧させることができるとしている。

 相模原市は同法に基づき昨年度まで該当者を抽出した住基台帳の閲覧で対応。自衛隊神奈川地方協力本部の職員が名簿を閲覧して手書きで書き写し、自衛官募集に利用していた。

 市が方針を転換したのは今年1月。「住民情報の正確性の保持のため対象者の住所、氏名などを紙もしくは電子媒体で提供を行う必要性がある」として個人情報の利用・提供について市情報公開・個人情報保護・公文書管理審議会に諮問。

 同審議会は同3月、▽個人情報の提供は宛先シールに限る▽提供目的以外での利用の禁止、使用済みの個人情報の速やかな廃棄など適切な措置を文書で求める─の2点を条件に名簿の提供を認めた。

 市は同6月、対象者約6千人(18歳の男女)の郵便番号、住所、氏名を記載した宛先シールを自衛隊側に提供した。

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