高校で探究学習経験した学生、大学から高い評価 大阪大学調査、未経験者を上回った傾向とは

探究学習経験の有無を比較した理系学生の傾向
探究学習経験の有無を比較した文系学生の傾向

 高校での探究学習経験者は大学入学後、学習に主体的で、分からないことに粘り強く取り組むと教員から高い評価を受けていることが、大阪大学の山下仁司教授による自大生調査で分かった。特に理系で差が顕著だった。さらに文系理系とも研究室のムードを高め、活性化してくれるとの評価が未経験者より高かった。山下教授は「因果関係を言い切るのは難しいが、主体性や積極性は、高校の探究経験が大学で生かされている傾向にある。こうした学生をどう確保し、伸ばすかが大学側の取り組みになる」と話している。

 大阪大学は2017年度から全学部で導入した総合型・学校推薦型選抜(総合・推薦)入試制度の検証などのため、18年度入学の学生が4年間を終える今年3月に調査。文系と理系で▽総合・推薦で入学-探究経験ありとなし▽一般入試で入学―探究経験ありとなしの各4グループ計434人について、教員の評価などを調査した。

 調査結果では研究における主体性・自立性で、総合・推薦入学で探究経験ありの学生が、あらゆる項目で他グループの学生を上回った。一般入試に限った比較でも課題やテーマ設定、うまくいかなくても諦めず取り組むなど多くの項目で、探究経験者が未経験者を上回った。

 文系では理系ほど差異は小さいが、粘り強く取り組むなどの項目で探究経験者が未経験者を上回る傾向が見られた。山下教授は「客観性の高い、教員評価による数字。学生の自己評価でも同じ傾向にあった」と分析した。

 また、大学4年間の成績評価では、総合・推薦入学で探究経験ありの学生が、文系、理系とも4年間を通して高かった。入学時のセンター試験の成績では、総合・推薦と一般入試者ともほぼ差はなく、成績評価の差は「学ぶ目的意識や知的好奇心の高さが反映した結果と考えている」としている。

 探究学習は、生徒自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集、分析し、協働しながら進める学習活動。高校教科の「総合的な探究の時間」は2022年度から導入されたが、19年度からの前倒しが特例として認められたほか、文科省の研究指定校としてなど先行して取り組む高校もあった。

 大阪大学スチューデント・ライフサイクルサポートセンターの副センター長で、入試広報・入試開発部を務める山下教授は「何を学びたいのかを考える探究活動は、大学で何を目指すのかにつながり、進路指導面でも役に立つ」とする。「探究活動を通して目的や意欲を持った入学者を、大学側がさらにどう育成していくか取り組んでいく必要がある」と話している。

 山下教授によると、高校で取り組んだ探究の成果を、書類審査、面接で評価する入試制度を導入した大学も出てきている。大阪大学でも理学部で、探究や個人活動を評価する「研究奨励型」入試を導入。全国の大学入試の現状では、国立で約17%、公立で29%、私立大で57%の学生が書類・面接等の評価を伴う総合型・学校推薦型入試を経て入学しているとする。「高校時代の探究の成果は、活動記録と共に合否を決める材料になってきている」と話している。

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