
昨季、長崎ヴェルカのゼネラルマネジャー(GM)兼監督を務め、今季はGM業に専念する伊藤拓摩氏(40)。オフシーズンから新戦力の獲得をはじめ、新たなステージへの環境整備に奔走中だ。国内外のトップレベルで豊富な経験を重ねてきたかじ取り役に、チームへの期待や意気込みなどを聞いた。
-今季の選手、スタッフの補強について。
納得の補強。総合力でレベルアップできた。スペインやオーストラリア出身選手も新たに入り、スタッフはほぼ全員英語を話せる。ダイバーシティー(多様性)があるからこそ、いろんな意見が出て、今のところいい具合に回っていると感じる。
-他クラブより選手の入れ替わりは少ない。
元々、1年目に来てくれた選手と長く、一緒にやりたいと考えていた。(レベルが上がる)B2を冷静に見ても勝たなければいけない。一緒のスタイル、メンバーでやってきたという継続の強さがある。それを生かさなければいけないと思う。
-選手たちは順調に成長しているか。
一人一人、筋力やスキル、バスケットに対する考え方とアプローチの方法は違うけれど、若手もベテランもどうやって今の価値を上げられるか。最年長のギブスは昨季、41歳にして外角シュートを起点にした攻撃ができるようになった。松本や髙比良らガード陣も、昨年から6、7キロ体重を増やして(B1滋賀との)プレシーズンマッチでも当たり負けしていなかった。スタッフ陣のおかげ。
-後任の前田監督への期待を。
監督1年目で公式戦も戦っていないので、まだ何とも。5、6試合する中で、フィードバックと言うと偉そうだけれど、お互いが感じることを意見交換することはできるんじゃないかと思う。シーズンを通して、彼らしいコーチングスタイルで思い切りやってもらえるようにサポートしていきたい。
(自分自身は)練習などは遠目から見て、本当に必要な時に何かを助言したり、アイデアを伝えたり、現場から「こうしてほしい」と声が上がればスッと遂行できるような立場でありたい。
-GMの仕事は。
日々勉強。人脈も今までと違って、意見交換もチャレンジング。おかげで毎晩ぐっすり。事業面の仕事が圧倒的に多く、子どもたちや指導者向けのクリニックは既に離島を含めてやっている。県内21市町でやるのが目標。ヴェルカの認知度がまだ本当に低いので、そういう活動をしていきたい。教えるのは得意な方なので、そこをうまく生かしたい。
-事業面の強化について。
専門知識は他の人の方がある。僕はアイデアベースでいろいろな話ができれば。スポーツの世界は日々成長する。厳しいフィードバックを互いに言い合っていかないと負けてしまう。負ければ仕事がなくなるし、いろんな人が悲しい思いをするのがプロの世界。その中で現場は常に自分が成長しようというマインドセットがないとやっていけない。携わってくれている人たちのそうした熱量は、やっぱりすごいと感じる。ヴェルカ全体に伝えて浸透させたい。
-応援してくれるファンのみなさんへ。
1年目の昨季は「長崎でこんなことがあってすごい」となったと思う。2年目はみなさんの目も肥えている。「去年と一緒じゃん」「ネクストレベルって言う割には、ネクストレベルに行ってない」とならないように、エンターテインメント性を高め、それを上回る演出、会場の雰囲気づくりをする。シンプルに楽しんでもらいたいし、わくわくしてもらいたい。お互いに高め合える関係であれればうれしい。