<社説>日中国交正常化50年 対立避ける対話の継続を

 日本と中国が北京で日中共同声明に調印し、国交を正常化して50年経った。 貿易をはじめ両国関係は緊密になっているにもかかわらず、尖閣諸島や台湾を含む東シナ海情勢の緊張が続く。今求められるのは対立ではなく両国間の政治的対話である。

 かつて琉球王国は中国がつくりだす秩序の中で中継貿易国家として繁栄した。玉城デニー知事には沖縄県独自の外交によって中国との対話、交流を続けてもらいたい。

 1972年、当時の田中角栄首相が訪中し、周恩来首相と交渉した。声明は、日本が過去の戦争で中国国民に重大な損害を与えたとして「責任を痛感し、深く反省する」と表明した。中国は日本への戦争賠償請求を放棄すると宣言した。日本は中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府」と認め、台湾を自国領とする中国の立場を「十分理解し、尊重」するとした。

 ところが2012年に尖閣諸島が国有化されたことによって中国海警局の船による領海侵入が常態化し、偶発的な衝突が懸念される状況が続いている。

 国内では「台湾有事」という言葉が飛び交い、軍事の話ばかりが目立つ。沖縄を再び戦場にすることを前提にした軍事論が先行することを、沖縄県民は受け入れられない。

 日中間には、共同声明に基づいて結ばれた平和友好条約がある。第1条で「全ての紛争を平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えないことを確認する」とうたっている。繰り返すが、両政府はこの精神に立ち返って、尖閣を紛争の火種ではなく平和の海にする努力が求められる。

 この間の日中貿易を見ると、2000年には日本の輸出全体に占める中国の割合は6.3%だったが、20年には22.1%へと上昇した。輸入も14.5%から25.7%に増えた。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日中の21年貿易総額は過去最高を更新した。輸出は初めて2千億ドルを突破し、貿易収支は5年連続で黒字となった。日本経済にとって中国は、切っても切れない関係にある。

 琉球新報社加盟の日本世論調査会による全国郵送世論調査によると、今後の日中関係が「悪くなる」との回答は「どちらかといえば」を含め計89%に上った。理由は「米国と中国の覇権争いが激しくなり、日中間の緊張も高まると思うから」が53%で最多だった。岸田文雄首相と習近平国家主席との会談について、「どちらかといえば」を含め計80%が「会談する必要があると思う」と答えた。世論の意向は明白だ。

 米国との軍事一体化を加速させ、防衛費を国内総生産(GDP)比2%相当の10兆円に倍増させるのではなく、中国との関係改善を図る外交努力こそが必要だ。今こそ日中平和友好条約の精神を思い起こしてもらいたい。

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