静岡県掛川市自慢の農作物を世界へ発信しようという壮大なプロジェクトが始まりました。後継者不足などで生産が激減した特産品の復活を狙います。
<山口駿平記者>
「壮大なプロジェクトの主役は掛川市特産の栗です」
掛川市は静岡県内でも有数の栗の産地です。掛川の栗は実が大きく甘みが強いのが特徴で「極上」と評されます。しかし…
<JA掛川市 水野裕子さん>
「全盛期に比べて5分の1くらいまで減ってしまいました」
その生産量は、2004年をピークに年々減り続けています。その最大の理由が後継者不足です。
<JA掛川市 水野さん>
「ここが昔、栗の栽培をされていたところです」
<記者>
「ここがですか。栗ってどこにあるんですか?」
栽培をやめておよそ10年。ここに栗の農園があったことすら、分からない状態になっていました。栗を扱う農家の数も全盛期の6割ほどになりました。
一方、自慢の栗を守ろうと頑張る人もいます。早川正實さん(76)はサラリーマン生活を終えたのち、父親の栗畑を引き継ぎました。
<栗農家 早川正實さん>
「先祖からいただいた土地を“死に地”にするということは、非常に心苦しいですし、できる範囲内でも土地は守っていきたい」
掛川の栗を何とか後世に残したい。そこで始まったのが壮大なプロジェクトです。「栗プロジェクト」と銘打った試み。JAや百貨店、金融機関、さらには、大手航空会社なども名を連ねます。
まずは「うなぎパイ」でおなじみの春華堂(本社・浜松市)が掛川の栗を使った商品を作り、日本航空の飛行機に乗せて世界へ発信するほか、浜松市の遠鉄百貨店などで販売することで、栗の需要が増え、生産者も安定的な収入を得られ、後継者不足も解消し、特産地として復活するーという筋書きです。
<春華堂 間宮純也常務>
「掛川から栗がなくなるかもしれないと聞いて。文化は1回なくなっちゃうともう、なかなか再興できない」
まず、プロジェクトメンバーがやったのは収穫体験。掛川の栗の特徴を理解します。
<春華堂 間宮取締役>
「収穫した栗とスーパーで買ってきた栗を比べると大きさが違う。掛川の栗の大きさにびっくりした」
地元には、世界で勝負できる素材があることを再確認しました。
<遠鉄百貨店 中村真人常務>
「この栗のすばらしさを伝えるのが大事なストーリー」
<春華堂 間宮純也常務>
「この栗の文化を何とか残して行って、お菓子を作ってその価値も伝えたい」
具体的な戦略はこれからですが、10年、20年という長いスパンで掛川自慢の栗の復活を目指します。