【指定廃棄物の行方】保管農家が東電に損害賠償請求 那須塩原の33戸、栃木県内初

指定廃棄物の搬出が終わった畑で始まった種まき=2021年、那須塩原市内

 東京電力福島第1原発事故で発生した放射性物質を含む指定廃棄物の問題で、栃木県は28日、稲わらなどの農業系廃棄物を一時保管してきた那須塩原市の農家33戸が、同社に対し損害賠償を請求したことを明らかにした。保管による影響で作付けができなくなった農地が対象で、県内での請求は初めて。

 同日の県議会一般質問で説明した。県畜産振興課によると、賠償の請求額は非公表。指定廃棄物を保管してきた農地の面積などに応じて算定した。保管場所が農地以外の山林や宅地などの場合は対象外になるという。

 那須塩原市では53戸の農家が指定廃棄物を保管してきた。同市によると、このうち賠償の対象となるのは44戸。県と、JAグループなどでつくる「農畜産物損害賠償対策県協議会」は同社と交渉を続け、3月に賠償額の算出方法が決定。同協議会を通じて8月に請求を行った。

 県内では那須塩原、大田原、矢板、日光、那須、那珂川の6市町で計123戸が指定廃棄物を保管してきた。

 県は賠償金が迅速に支払われるよう同社に働きかけるとともに、市町と連携し残る農家の請求手続きを支援する方針。

 農家保管の指定廃棄物を巡っては、那須塩原、那須、日光の3市町が暫定集約先を決定し、那須塩原が集約、焼却を開始している。

 一般質問は相馬政二(そうままさじ)氏(静和の会)が行い、青柳俊明(あおやぎとしあき)農政部長が答弁した。

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