小4死亡ひき逃げ13年、母が情報提供訴え 書類破棄の元警官は謝罪なし 逃走考えない社会実現へ前向く母

小関孝徳君の仏壇の前で手を合わせる孝徳君の母親=熊谷市の自宅

 埼玉県熊谷市で2009年9月、小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件は、30日で発生から13年を迎える。県警は新たにチラシを作り直し、孝徳君の母親は今も犯人の逮捕に向けて全力を尽くしている。時効まであと7年。事件の風化に危機感を抱く母親は「死亡ひき逃げ事件の公訴時効を撤廃し、逃げることを考えない社会をつくってほしい」と訴える。

 事故が起きたのは09年9月30日午後6時50分ごろ。孝徳君は自転車で帰宅途中、熊谷市本石1丁目の市道で事故に遭った。16年に道交法違反(ひき逃げ)の時効が成立。県警は自動車運転過失致死罪の時効が目前だった19年9月、罪名を危険運転致死罪に変更し、捜査を継続することになり、時効は10年延長された。

 また県警が紛失した孝徳君の腕時計に関する捜査書類を破棄したとして、公文書毀棄(きき)罪の罪に問われた県警交通捜査課元警部補(64)の控訴審判決で、東京高裁は7日、懲役1年6月、執行猶予3年とする一審さいたま地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。双方が上告期限までに上告せず、有罪が確定した。

 母親は裁判の傍聴を続けてきたが、全てに納得する答えを得ることはできなかった。「(被告は)最後の最後まで自分の非を認めなかった。反省する態度も見られず、謝罪することもなかった」と振り返った。有罪が確定したものの、「なぜこの人が担当だったのか」という思いが強くなっていったという。

 県警は2台の車が関与している可能性があるとして、チラシを作り直した。チラシには「逃走車両は2台(複数台)の可能性があります。情報をお寄せください」と記載。さらに下部には「※1台は、事故現場を通過した際、孝徳君を転倒させた可能性!」「※もう1台は、路上に転倒した孝徳君を轢(ひ)いた可能性!」と記載されている。

 これまで県警が作製したチラシには車両の台数は触れられていなかった。母親は県警から返却された証拠品の調査を民間の事故調査会社に19年に依頼し、実車実験なども行われた結果、2台の車にひかれた可能性が浮上していた。母親は「事故から13年がたってしまったけど、諦めなくて良かった」と力を込めた。

 母親は19年1月からブログを始め、交流サイト(SNS)を通して約3年半で338件の情報が寄せられた。死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求めて署名活動も行っており、オンラインと手書きを合わせて約9万5千筆の署名を集めた。県議会では今年3月、「死亡ひき逃げ事件における公訴時効撤廃に向けた法整備等を求める意見書」も全会一致で可決された。

 秋の全国交通安全運動初日の今月21日、母親は地元のコミュニティーFM「FMクマガヤ」に出演し、情報提供を呼びかけた。30日は事故現場付近で午後4時からチラシを配り、同6時からは同FMに再び出演する。母親は「ひき逃げ事件を起こさせないためには、逃げることを考えない社会をつくること」と話した。

 母親のブログ《未解決》熊谷市小4男児死亡ひき逃げ事故!(https://ameblo.jp/kosekitakanori/

県警が新たに作り直したチラシ

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