来年か3年後に早期退職を検討中の53歳独身女性。老後生活費を賄う対策は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、53歳、会社員の女性。来年か、3年後の早期退職を検討している相談者。現状と同等の年収での再就職は望めないなか、早期退職は可能でしょうか。また老後の生活費を賄う対策は? FPの伊藤亮太氏がお答えします。


現在53歳。比較的大規模な企業で勤続20年の管理職として勤めていますが、3年後、役職定年となる56歳での退職、または会社の早期退職制度(来年度まで継続)を利用しての来年の退職を検討しています。60歳まで勤めることも可能で、継続雇用の制度もありますがその場合は退職金が減額されます。仕事そのものはかなり長時間労働、転勤もある業務のため、無理に継続したくないと思っています。また、長期間勤めてはいるものの、汎用性の高いスキルがあるわけではないので、フルタイムでの再就職までは考えていません。

一方で、3年後、来年の退職となれば、貯蓄・投資の増額もあまり望めません。そうした状況で、3年後、来年度の退職が可能かどうか、可能にするためにはどういった対策が取りうるか、アドバイスをお願いします。

退職金の見込みは3年後の退職で2,000万円程度。来年度だと2,800万円程度。企業型確定拠出年金の残高が現時点で500万円程度(DCファンド)。そのほかに簡易保険に入っており、60歳、65歳、70歳の時に200万円ずつ支払いを受けられます。

住まいは都内の持ち家(築18年の分譲マンション、ローン終了)。場合によっては売却し両親が住む地方の実家に戻ることも選択肢ですが、退職後は一定の期間は都内で暮らすつもりです。両親は現在健康で自立して生活していますが、将来の介護の可能性は課題です。近くに住む兄弟が面倒を見てくれるとは思いますが、実家に戻った場合は介護も担うことになるでしょう。介護資金は両親の資産である程度面倒を見られると思います。

【相談者プロフィール】

・女性、53歳、会社員、独身

・家族について:実家に80代の両親あり

・住居の形態:持ち家(マンション、東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万5,000円(管理費と固定資産税)

・食費:8万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:3万円

・通信費:2万円

・お小遣い:8万円

・その他:医療費月1万円程度、整体費用月1万円程度

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:15万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:200万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,500万円

・現在の投資総額:260万円

・現在の負債総額:0万円

伊藤:ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太です。ご相談に回答させていただきます。まず、現在の貯蓄総額は1,500万円、投資総額は260万円ということで、金融資産は1,760万円となります。

また、持ち家で、築18年、ローン支払いも完了しているという状況ですね。仮に来年退職されるとした場合をまずは検討してみましょう。退職金はある程度税金がかかると見込んで2,500万円ほどで見積もっておきます。この段階で4,260万円プラスボーナスなどからの年間貯蓄額380万円、合計4,640万円ほどの金融資産があることになります。

来年退職した場合生活費はいつまでもつ?

もし仮に現在と同じ生活費、月額30万円で今後も過ごすとなると、年間で360万円必要です。そのため、12~13年ほどで資金を費やすことになります。簡易保険や企業型確定拠出年金を考慮しても、16年ほどの費用が賄える状況です。

もちろん、これに加えて週3~4日で比較的自由な仕事を選ぶなどして、不足分を確保していくという選択肢が検討できます。単純に月額20万円、ボーナスはなしとして見積もってみましょう。

社会保険料や税金を引いた後、仮に17万円ぐらいが手元に残るとすると、年間で200万円ほどの可処分所得が得られます。65歳までの11年間ほどを継続して働いた場合、2,200万円の資金が構築できます。これにより、現状の生活費で考えるとさらに6年間分の生活費が賄えることになります。単純計算で75~76歳ぐらいまでの生活費はなんとかなりそうです。

厚生年金次第で80歳くらい以降は赤字になるかも?

そして忘れてはいけないのが、厚生年金です。今回のご相談者の開示情報には、厚生年金がどれぐらいになりそうか記載がありませんでしたので、何とも言えない部分があるものの、仮に月12万円ぐらいの年金が支給されるのであれば、年間144万円の年金収入が65歳から見込めることになります。10年間年金を受け取ったとすると、1,440万円。4年分の生活費に相当します。

上記はあくまでも一つの仮定にすぎず、実際はさらに多くの収入、年金を受け取ることができるかもしれませんが、ざっとした計算で79~80歳までの生活費は確保できそう、それ以降は赤字になるかも……という予測になります。

これは、来年退職した場合であり、3年後の退職の場合には貯蓄額がおよそ300万円ほど増加するため、もう少し生活費はカバーできることになりそうです。

80歳以降の生活費をどう捻出する?

さて、このような状況ですので、早期退職を検討される場合には、80歳以降の生活費も賄えるような対策を行う必要があります。

対策方法は複数検討できます。まず、早期退職を前提としつつも、ある程度収入がまかなえる企業に再就職をすること。いまの年収よりは下がることになると思われますが、上記前提とした月額20万円以上の収入がまかなえる企業で働くことができれば、生活費の確保につながります。月額30万円であれば単純計算で年間120万円の収入アップとなるため、11年間働いた場合税金等考慮しても1,000万円程度貯蓄額を増やすことができそうです。

次に、年金の繰下げを検討します。ご相談者の場合、65歳から年金を受け取らなかったとしても生活費は当分賄えそうな状況です。そのため、70歳から年金を受け取るように繰下げを検討してもよいかもしれません。仮に70歳からの年金受け取りの場合には、本来65歳から受け取れる年金額の42%増しとなります。こうした仕組みを活用して、生活費確保をはかるのも良いでしょう。

この他、現状の生活費から、保険料など途中でかからなくなる部分を貯蓄する。住居を売却し、実家に戻ることで生活費を抑えながら売却金額でさらに貯蓄を上乗せするといった方法が考えられます。

無理に資産を運用する必要はない

こうした方法を選択していくことで、女性の平均寿命ぐらいまでの資金構築は可能だと思います。年齢を考慮すると、無理に資産運用を行う必要はないと考えます。早期退職も可能だと考えますが、その後のリタイアメントプランをどのように考えるかによって資金繰りは大きく変わってきます。あくまでも上記は簡易的なもの(わかっている情報の範囲)になりますので、是非ご自身の思い描くリタイアメントプランを実現できるようにいろいろ試算をされてみてはいかがでしょうか?

© 株式会社マネーフォワード