発展と活況、緊張… 横浜中華街の店主ら、日中国交正常化50年に何を思う

「中日国交正常化50周年」を祝う横断幕が掲げられた横浜中華街=29日午後、横浜市中区

 日中国交正常化から50年を迎えた29日、国内屈指のチャイナタウン、横浜中華街(横浜市中区)では、半世紀の節目の日を祝う赤い横断幕が「善隣門」に掲げられ、多くの観光客でにぎわった。50年前を知る中華料理店の店主たちからは、現在の発展と活況を喜びながらも、一方で近年の両国の冷え込みを複雑に受け止め、残念がった。

 「50年前の今日は爆竹の音も鳴り響き、とてもにぎやかなお祝いムードでしたよ」

 中華料理店「牡丹園」を経営する林義昇さん(59)は9歳だった当時を振り返る。父が中国・広東省出身の林さんは日本で生まれ育った。「国交正常化のおかげで中国人が日本に来やすくなり、やがて『老華僑』と呼ばれる人たちから、さらに『新華僑』たちが来日し商売を始めるようになっていきました」

 街は拡大し、一大観光地へと発展を遂げた。

 60年前から続く中華料理店を切り盛りする老華僑の女性(79)も50年前の日を思い返し、「そのときも国交正常化を祝う横断幕が掲げられていたはず」と懐かしむ。女性は当時、店で働き、来店客と接してきた。

 「ここに来るお客さんも喜んでいた。国交正常化の後は、食材も自由に手に入るようになったし、中華街として大きく発展するきっかけになった」

 気にかかるのは、近年の両国関係だ。女性は「刺激し合うだけでなく、互いに前を向いて仲良くしてほしい」と思いを込める。「日中はこれまでに戦争などいろいろなことがあった。けれど、中華街の基礎をつくった先人たちが今の繁栄を知ったら喜ぶんじゃないかな」と表情をほころばせた。

 林さんも日中関係について「今は関係が良くないので心配している。長年、良い友達という感じだったので、これから先もお互い良くしていきたい」と願った。

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