ブタの皮膚由来の人工角膜で劇的な視力改善、20人中19人

 ブタの皮膚から抽出したコラーゲンを使って作成した人工角膜を移植すると、視力の大幅な改善が見込めると期待できることが、スウェーデン、イラン、インドなどの研究者で構成する国際チームの研究で明らかになった。既存手法より拒否反応も少なく、長期間使用できるという。

「Nature Biotechnology」に掲載された論文によると、インドとイランに在住する「円すい角膜」の患者20人に対し、今回の論文の筆頭論者であるスウェーデンのリンショーピング大学のMehrdad Rafat氏らが開発した、ブタの皮膚から抽出したコラーゲンを原料とする人工角膜を移植したところ、19人の視力が大幅に改善。全盲だった14人全員がなんらかの視力を獲得した。全盲ではなくとも矯正治療が必要だった患者も、コンタクトレンズを使用できるようになったという。移植後2年を経過しても視力は安定し、後遺症などの問題も報告されていないとしている。

 今回の小規模な治験で投入されたこの人工角膜は、ブタ由来のコラーゲンが主原料で拒絶反応リスクが極めて低く、耐久性にも優れている。また大量生産が可能で保存期間も2年と長いうえ、元の角膜を切除する必要のない術式を可能とするので、精密かつ大規模な機器を必要とせず、医療資源が乏しい発展途上国に存在する、多くの視覚障害者の願いを一気に叶えられる大きなポテンシャルを秘めている。

 なお今回の治験対象となった「円すい隔膜」は日本では難病指定されており、進行した場合角膜移植しか治療法がない。日本でもこの疾患に限らず、角膜移植が必要となった場合、慢性的に一定期間待たされる状況となっているほか、人工角膜の選択肢もまだ少ない。こうした新しい材料の人工角膜は、途上国だけでなく先進国においても望まれているものだろう。

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