<社説>知事 防衛相と初会談 沖縄に危険持ち込むな

 浜田靖一防衛相が28日に来県し、玉城デニー知事と会談した。米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡る議論が平行線に終わったほか、防衛省が進める南西諸島への自衛隊配備強化に対する県民の不安を巡っても温度差が際立った。 浜田氏は中国の軍事活動を念頭に、「南西諸島における防衛体制を目に見える形で強化していく」と述べた。年末の「安保関連3文書」改定で敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有明記が持ち上がる中、今回の来県を沖縄にさらなる危険や負担を持ち込む地ならしにしてはならない。

 玉城知事は浜田氏との会談で、過去3回の県知事選や辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票で辺野古新基地反対の民意が示されていると指摘。その上で「政府は民意を真摯(しんし)に受け止め、政府と県が忌憚(きたん)のない意見交換が行えるような対話の場を設けていただきたい」と訴えた。

 辺野古新基地は大浦湾側に存在する軟弱地盤により、大幅な工期の遅れと工費の増大が生じることを政府自身も認めている。軟弱地盤改良のため沖縄防衛局が提出した設計変更を玉城県政は不承認とした。11日の県知事選で玉城知事の2期目継続が決まったことは、県政の対応を支持する民意の表れだ。

 しかし、浜田氏は「日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性除去を考え合わせた時、辺野古移設が唯一の解決策だ」と従来の政府方針を繰り返した。対話に応じようという姿勢はない。

 沖縄の民意の無視や住民の安全軽視は辺野古新基地だけではない。玉城知事は「77年前に戻って、本土防衛の捨て石のような状況に沖縄が置かれることは絶対にあってはならない」と強調し、自衛隊の配備強化に対しても懸念を伝えた。安保関連3文書を巡って基地負担を強いることがないようくぎを刺した。

 反撃能力の保有が決まるようなことがあると、敵基地攻撃の能力を持つミサイルが沖縄の自衛隊基地に配備される可能性が高い。そうなれば沖縄全体が相手から攻撃の標的となる危険性も高まる。

 台湾有事を想定して防衛省が検討する住民用の避難シェルター整備計画に、県内では反発が広がる。だがここでも浜田氏は「国民保護のために何ができるのか検討したい。ミサイルを撃っても効果がないとなれば抑止にもなる」と主張し、沖縄を戦闘に巻き込む可能性に全く無頓着だ。国民保護に名を借りた戦争準備は許されない。

 政府は県民の民意が明白な辺野古移設の見直し要求について、沖縄県が再三求めてきた対話に応じるべきだ。そして、沖縄が再び戦争に巻き込まれるのではないかという不安の高まりに真摯に向き合い、軍備拡大の対抗措置ではなく、外交によって平和的に緊張緩和を図る姿勢を明確に示すべきだ。

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