西九州新幹線開業1週間 “特需”に沸くも ダイヤ乱れ弱点 特急消え不満も

利用客が行き交うJR長崎駅の新幹線改札口=長崎市尾上町

 西九州新幹線(武雄温泉-長崎)の開業から30日で1週間。初日からの3連休の利用状況は「順調な滑り出し」(古宮洋二JR九州社長)で、県内沿線は観光を中心に“特需”に沸いた。ただ、それ以降は3日連続でダイヤが乱れ、「リレー方式」の弱点も浮かんだ。博多直通の在来線特急が廃止され、恩恵が少ない地域では不満もくすぶっている。
 開業から6日間(23~28日)の利用者は約4万6千人。在来線特急の諫早-長崎と比べると、前年の3.23倍、新型コロナウイルス禍前の2018年の1.12倍だった。平均乗車率は39%。古宮社長は29日の会見で「大きな起爆剤となった」と強調した。
 前半3日間(23~25日)は連休で、平均乗車率は50%。県内沿線は観光客でにぎわった。JR長崎駅の総合観光案内所には計約2千人が訪れた。長崎国際観光コンベンション協会の吉冨章広報・宣伝課長は「非常に多くの人に利用された。ユニバーサルツーリズムなど新たなサービスの進化に注力したい」と意欲を見せる。10月からは国の全国旅行支援も始まるとあって、長崎市内のホテルの担当者は「早速、予約や問い合わせが来ている。新幹線と絡めた旅行商品もいろいろあるので、コロナ禍前に戻るくらい好転しそうだ」と期待する。
 ところが、連休明けの26~28日は遅延や運休が相次ぎ、乗車率は各日とも2割台にとどまった。佐賀・福岡両県内の踏切事故や悪天候による在来線リレー特急の乱れが影響。29日に出張のため西九州新幹線を利用した福岡市の会社員(46)は「今日は新幹線を使うか迷った。安定が強みだから、あまり(トラブルが)多いと困る」と注文した。
 古宮社長は「ある意味でリレー特急区間の重要度が上がった。踏切や大雨リスク箇所を再度点検し、できる対策を打ちたい」と述べた。
 新幹線開業に伴い、長崎市川口町の浦上駅には普通・快速列車しか停車しなくなった。同市の布袋厚さん(63)は「博多に行くには一度長崎駅に行かなくてはならず、その分運賃もかかる。時間短縮効果は薄いのに特急料金も上がった。浦上駅利用者にはメリットがない」と不満をもらす。駅前で居酒屋「安居(あんご)」を営んでいた溝口正さん(74)は店をたたんだ。「コロナ禍前は出張帰りのサラリーマン客も少なくなかった。特急が止まらなくなり、(客足の回復は)期待できない。この辺りの店は厳しくなるのでは」と話した。


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