神尾楓珠「物事の捉え方は人それぞれだということが、アートで表現されているのかな」――「階段下のゴッホ」インタビュー

TBSの深夜ドラマ枠ドラマストリームでは、4作目となる「階段下のゴッホ」が放送中。主人公は、大手化粧品メーカーに勤め人望厚き働き盛りの30歳、年収1000万円超えの “高収入バリキャリ女子”の鏑木都(SUMIRE)。都は、ある絵画に出合ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指します。美術の道を志すことと、勤めている化粧品メーカーでの勤務を両立するという無謀にも見える挑戦を試みる都が美術予備校で出会ったのは、“ザ・才能の塊” である6歳下の青年・平真太郎 (神尾楓珠) 。自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく都を通して、夢を諦めない現代人に“それでも前に進め”と背中を押すヒューマンラブストーリーです。

今回は、その顔立ちの細やかさから作中で通称 “ダビデ” と呼ばれるほどのイケメン・真太郎を演じる神尾さんにインタビュー。圧倒的な才能を持つ真太郎ですが、なんと藝大を目指し6浪中という役どころ。神尾さんには、本作の見どころはもちろん、真太郎のキャラクターや現場でのエピソードを語っていただきました。

――最初に台本を読んだ時の感想を教えてください。

「世界観がしっかりあって、セリフの言い回しも独特な作品だと思いました。ナレーションが多いのも特徴です。都目線でのナレーションが多いのですが、誰かに当てている手紙を読んでいるような演出になっていることもあり、世界観がほかの作品とは違うと感じました」

――真太郎を演じるにあたって、どのように役作りをされましたか?

「役作りに関しては、現場で思いついたことを行って作り上げていきました。絵を描く天才の役なので、その雰囲気を出すのにはちょっと苦労しましたね。どうやったら天才に見えるのかを考えたり、台本に書いていない部分も工夫してみたり。周りとの意見ややってることが違うように見せることで、『この人なんか周りと違うな』って思わせられたらいいなと」

――アートが大きなテーマとなっていて、作中でも重要な役割を担っていますよね。

「都は仕事と絵の勉強を両立する難しさに悩みを抱えているのですが、真太郎のある葛藤も後半で描かれることになります。その中で、アートの力がすごく大きく描かれていますね。絵というものは、物事を伝えることもできますし、同じ題材の絵でも書いている人によって全然違う作品になって、見方もさまざま。本作では、物事の捉え方は人それぞれだということや、 視点を変えれば見え方も変わるということが、アートで表現されているのかなと思います」

――撮影で苦労したことはありますか?

「絵を描くのはやはり難しかったです。絵って描けば描くほど洗練されていきますし、それを 1カ月で自分のものにしないといけなかったので苦労しました。でも、役柄的に絵の軸が少しぶれていても成立するので、そこは助かった部分です」

――撮影に入る前に何か準備したことはありますか?

「絵の指導を共演者の皆さんと一緒にたくさん受けました。でも、どういうふうに撮影するかなどは現場に入ってみないと分からなかったので、臨機応変に対応しようと思って臨みました。役柄に関しても、柔軟に対応できるように固めすぎずに。共演者の皆さんと監督と、一緒に現場で作り上げました」

――真太郎は序盤ではすごく謎めいた存在ですが、どのように映っていますか? また、似ていると感じる部分があれば教えてください。

「真太郎は自由で、人と見ている視点が違うんですよね。合理的な一面もあって『絵のためにならないことは何も必要ない』みたいな。ある意味すごく今どきな人だなと思いました。僕もいろんな物事に興味を持つタイプではなくて、一つのことにハマったらそのことしか考えられないので、そのあたりは似てるかな」

――逆に自分とは違うなと思う部分はどんなところですか?

「真太郎ほど周りと違う存在になれないことですかね。何人かで一緒にいる時は、人に合わせないといけないことも多いと思うのですが、そんな中で真太郎のように人に合わせず生きていくのはすごく大変だと思います」

――人に合わせない真太郎を演じる上で、現場では共演者とのコミュニケーションを控えていたりするのでしょうか。

「現場では、普通にみんなで仲良くしゃべってます。強いて言えば、都と真太郎の関係性もあるので、SUMIREさんとは、あまり距離が近づきすぎないようにしていますね。そこまで意識しているわけではないのですが、ある程度の距離は保っています」

――それはSUMIREさんと話し合いされて…?

「話し合いなどはしていなくて、お互い自然とですね。なんとなく干渉しすぎない方がいいのかなと思っていたので」

――では、ほかの共演者とはどんなふうに過ごしていますか?

「全員でいる時は和気あいあいとしゃべっています。高橋侃くんがめちゃくちゃ話しかけてくるので、もはや話すしかなくて(笑)。そうやって話しているうちにどんどん仲良くなりました。5人でいる時の空気感は基本的に侃くんが作ってくれています」

――皆さんとはどんなことを話されていますか?

「食べ物とか、好きな芸能人のこととかですね(笑)」

――(笑)。和気あいあいと話していても、本番に入ると自然と役に切り替わるのでしょうか?

「普段の関係と役での関係性が似ていたので、あまり切り替えについて考える必要はありませんでした。話していて、そのままの流れで本番に入りますね」

「皆さんに伝わるようなお芝居を意識しないといけないと思っています」

――真太郎と自分を色で例えるとしたら何色でしょうか? イメージする色があれば教えてください。

「難しいですね…(と、少し悩みながらも)真太郎は、青い衣装を着ていることが多かったので、青。自分は紫ですかね。僕のイメージは、明るくてパッとしたような色ではないような気がしています」

――作中では“ダビデ”と呼ばれるほどの真太郎ですが、その中でも影のある雰囲気を演じられる神尾さんは唯一無二の存在。紫という色はピッタリです! 本作では絵に挑戦されていますが、好きな表現の方法はありますか?

「“言葉”です。僕は音楽を聴くのが好きで、聴く時は自然とメロディーよりも歌詞を理解するようにしているので、自分の中では言葉の優先順位が上の方にあるんだろうなと思います」

――歌詞をよく見るようになったきっかけの曲などはありますか?

「きっかけになった曲は、THE YELLOW MONKEYさんの『JAM』という曲の後半部分。有名な歌詞ですが、『外国で飛行機が墜ちました』という部分からの歌詞を聴いて、あんなにも物事をストレートに伝えてることが自分の中で新鮮だったのでハッとしたんです。それまで聴いていた曲も遠回しのメッセージがあったり社会風刺的な要素を含んでいたのですが、こんなにもはっきりと伝える曲があるのかと驚かされて、それからは歌詞をちゃんと読み込むようになりました」

――音楽の影響を受けて、お芝居に生かされていると感じることはありますか?

「“伝える”ことって人間にとって一番大切な行為ですし、なくてはならないものだと思います。音楽もそうだし、お芝居もそう。だから、僕もちゃんと皆さんに伝わるようなお芝居を意識しないといけないと思っています」

――本作の登場人物は絵を描くことを生活のよりどころにしていますが、神尾さんにとってそのようなものはありますか?

「それこそ音楽かもしれません。常に音楽は聴いていて、本当に仲のいい友人といる時だったら、片耳イヤホンつけながら過ごしているくらい」

――本当に日常的に聴いていらっしゃるんですね!

「はい。テンションを上げたい時や、やる気を出したい時にも音楽を聴いて、メンタルコントロールをしたり。お芝居の前にも気持ちを切り替えるために聴く時もあります。心の切り替えのスイッチですね」

【プロフィール】

神尾楓珠(かみお ふうじゅ)
1999年1月21日生まれ。東京出身。2015年に俳優デビュー。ドラマ「アンナチュラル」(TBS系)、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)、「左ききのエレン」(TBS・MBSほか)、「鈍色の箱の中で」(テレビ朝日系)、「顔だけ先生」(フジテレビ系)、映画「20歳のソウル」「恋は光」など話題作に出演。

取材・文/TBS担当 A・M

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