第八十九回「いつのまにやら格好良く思えるコーデル・ジャクソン、アウトサイダー風味恐るべし!」

アメリカはよくわからない、ヘンテコリンなミュージシャンがたくさんいます。そんなミュージシャンを見るたびに、ああ、アメリカは底なしだと思えてくるのです。 父親に無理やりバンドを組まされ、姉妹で演奏活動をさせられていたシャグスなんて、その最たるバンドなのではないかと思います。他にも、世界で一番ブリーフにタンクトップ姿が似合う人、ダニエル・ジョンストンなんかも、同じような部類のミュージシャンなのではないかと思います。 そんでもっていろいろ調べていたら(つうか、調べたとかいいつつ、結局インターネットを見まくっているだけなので、はたして、これを調べたといっていいのかわかりませんし、なんの達成感もない。こんな調子で、調べたなんていってすみません。でも、一応調べたってことにさせていただきます)、で、その結果、彼らのことを、アウトサイダー・ミュージックと呼ぶというのを知りました。アウトサイダー・アートとかあるから、その、ミュージック版なのかしれませんが、ここにキャプテン・ビーフハートも入っているのは、どうなのだろう? と少し疑問に思いながらも、なんとなくアウトサイダー・ミュージックの部類がわかってきました。 でもって、今回紹介したいのは、もしかしたら、この部類、アウトサイダー・ミュージックに入るかもしれない、ロックン・ロールのお婆さん、コーデル・ジャクソン(Cordell Jackson)の、『Live in Chicago』です。 わたし、この人のことを知ったのがいつだったかまったく覚えてないのですが、お婆さんがエレキギターを持っているアルバムジャケットの写真があって、「ああこういう感じの、ちょっと狙って、ふざけた感じね」などと思っていたら、ジャケット写真に写っているお婆さんが、本当に演奏者だったのです。え? このお婆さんが! 皆さまも、写真を見たら驚くと思います。 しかし、これが超絶プレイとか哀愁プレイとかだったら、感動するかもしれないけれど、そういうのは全くありません。エレキギターをジャカジャカ弾いているだけです。このアルバムを聴いていると、なんというか、隣の家に住んでいる男子中学生がエレキギターを購入し、練習し、ようやく弾けるようになり、嬉しくなって弾きまくっている音が、壁を抜け聴こえてきている、といった感じなのです。でもって夜中になってきて、わたしは、そろそろ「うるさいぞ!」と文句を言おとしている。だから、コーデル・ジャクソンも聴き続けていると「ああ、うるせえなあ」なんて思えてきたりもします。しかし、いつのまにやら格好いいな、と思えてくるからアウトサイダー風味恐るべしです。 そして、いま、わたしは、ギターを購入し、少しだけ上手になった中学生のギタープレイを無性に聴きたくなっています。

© 有限会社ルーフトップ