娘が行方不明31年、情報提供途絶え「どう捜したら…」 再会願う70代父の苦悩

野村香さんの情報を求める看板は今も設置されている=9月29日、横浜市旭区

 横浜市立本宿小学校3年の野村香さん=当時(8)=が同市旭区の自宅近くで行方不明になってから、10月1日で31年がたつ。有力な情報はいまだなく、時だけが無情に流れていく。新型コロナウイルス感染症の影響で、チラシ配りも3年連続で見送られ、情報提供を呼びかけることもままならない。「どうすればいいのか、分からない…」。まな娘との再会を切に願う父の節二さん(74)の苦悩は深い。

 「コロナ禍になって、最近も取材は受けていませんでした」

 電話取材に応じた節二さんは開口一番、そう明かした。

 進学予定だった市立本宿中学校では、香さんの誕生月の3月と行方不明になった10月の年2回、相鉄線の二俣川駅と鶴ケ峰駅でチラシを配り、情報提供を呼びかけてきた。だが新型コロナが猛威を振るい、2020年から中止に。節二さんは「マスクをまだ外せませんし、感染を拡大させないよう、念には念を入れてます。コロナ禍の対応で中学校も大変だと聞いていますし…」と口数は少ない。

◆進展なくても「待ち続ける」

 神奈川県警旭署の特別捜査本部にはこれまでに、計3130件の情報が寄せられた。ただこの1年はゼロだった。近年、事故や事件の解決に防犯カメラの映像が役立つケースは多いが、香さんに関しては手掛かりとなる映像もない。節二さんは「新しい情報がなく、進展もありません。どういう風に捜したらいいのかも、分かりません。(香さんの)当時の状況や、今の様子も、想像するしかありません」とため息は深い。

 旭署の荒井卓夫署長(59)は当時、機動隊員として捜索に当たっていた。「事件を風化させない。ささいなことでも構わないので、情報を寄せてほしい」と力を込める。「状況は変わっていないけれど、情報提供を待っているんです」。節二さんもまた静かにそう語り、続けた。「娘の帰りを待ち続けるという気持ちは、今も何も変わりません」

 【野村香さん行方不明事件】1991年10月1日午後3時50分ごろ、自宅から約540メートル離れた書道教室に向かう途中で行方不明になった。県警は9月1日までに、延べ9万7356人の捜査員を動員し、5万7860世帯、9万168人に聞き込みを行ったが、有力な手掛かりは得られていない。情報提供は、旭署特別捜査本部電話045(361)0110。

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