TGRカローラのブッチャーが2年連続ポールから完勝。BMW、ヒョンデも勝利で大混戦に/BTCC第9戦

 9月24~25日の週末にシルバーストンのナショナル・レイアウトで争われたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第9戦は、2年連続ポールポジションを獲得したTOYOTA GAZOO Racing UKのロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGRスポーツ)が、レース1でポール・トゥ・ウインを達成。続くレース2はジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)が、最終レース3はトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)がともに制し、タイトル候補たちが最後の追い込みに向けスパートを見せる結果に。

 一方で、3ヒートを通じて尻上がりに調子を上げ、最後は2位表彰台に喰い込んだ王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、わずか5点のマージンでふたたび選手権首位を奪還したのに対し、この週末までリーダーを守ってきた“4冠王者”コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)は、最終戦を前にランク4位まで後退する厳しい展開となっている。

 シルバーストンでの週末を前に「この予選がタイトルに向け非常に重要になる」と語っていたイングラムが、まずは最初のプラクティスで最速の幕開けを飾ると、続くFP2ではアダム・モーガン(カーゴッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)がトップタイムを記録。予選を前にFFとFRのパフォーマンスが拮抗したバランスであることが見て取れた。

 その30分間の予選セッションは、途中に短い赤旗で分断される場面もありながら、トヨタのブッチャーが早い段階でBMWのヒルに対し優位に立ち、セッションの多くをトップで過ごす展開に。再開後はヒルがわずかにギャップを縮めたものの、たった0.037秒差でブッチャーが今季初のポールを手にした。

「昨季のように快適にセッションに入れたわけではないが、クルマはここで本当に良い走りを見せた。僕らはトップ3か4には入れると感じていたが、それはすべて適切なタイミングでラップをすることに掛かっていた。ポールポジションに戻れたのはいい気分だし、シーズンがここまで進んだ後、それが必要だったと思う」と、愛機カローラの復調を語ったブッチャー。

「ジェイク(・ヒル)はスタートで速いだろうが、僕らもトラクション勝負が苦手なわけじゃない。目標は良いスタートを切り、ターン1でリードして、そこから前だけを見て戦うことだ」

 そのレース1オープニングではブッチャーの宣言どおり、トヨタ・カローラGRスポーツがポジションを守って有利なリードを奪ったものの、背後ではアシュリー・ハンド(カーストーンパワー・マックスド・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)がベケッツでスピンオフし、首位のアドバンテージは早々に帳消しとなってしまう。

予選を制したロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGRスポーツ)は「(僚友の)リッキー(・コラード)が良いデータをたくさんもたらしてくれた」と感謝の言葉を述べた
エリザベス女王崩御の後、初めてのイベント開催となったBTCCも、グリッド上で黙祷が捧げられた
SCが介入しながらも、ブッチャー は24周を走破して“ライト・トゥ・フラッグ“での今季初勝利を達成
「今日のクルマは素晴らしかったし、結果でそれを証明できた。前半の最終セクターで少し苦戦したが、確実にパフォーマンスが向上した点は良かったよ」と勝者ブッチャー

■次戦を楽しみにするサットンと、「逆転の希望は捨てない」と語るターキントン

 しかしリスタート後もBMWからの攻撃を凌いだブッチャーは、テール・トゥ・ノーズのまま24周を走破して“ライト・トゥ・フラッグ”での今季初勝利を達成。2位のヒルに続き、一時はイングラムに先行されていたモーガンがポジションを奪還しての最終ポディウムを確保し、BMW勢が表彰台の脇を固める結果となった。

「今日のクルマは素晴らしかったし、結果でそれを証明できた。前半の最終セクターで少し苦戦したが、確実にパフォーマンスが向上した点は良かったよ」と、昨年はここで2勝を飾っていたブッチャー。

 一方、オープニングヒートで敗れたヒルは続くレース2で逆襲に転じると、ブッチャーと並んでの2番手発進からゴードン・シェドン(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)に先行されはしたものの、3番手からの巻き返しを見せる。

 早い段階で最終コーナー手前ラフィールドでシビックを捉えたBMWは、直後にふたたびのセーフティカー(SC)でギャップが解消されると、リスタート後の攻防劇でカローラを捉え、11周目のコプスで首位浮上に成功。そのままブッチャーを引き離し、この時点でランキング首位に2点差まで迫る勝利を手にした。

 そしてリバースグリッド採用のレース3では、4番手発進だったイングラムが「まるで『モーゼの十戒』のように目の前で海が割れた」と表現するように、前を行くBMWのモーガンとジョシュ・クック(リッチエナジー・BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)がべケッツで接触。

 これで首位に立ったヒョンデは、2回のSCピリオドも無難にこなし「背後のアッシュ(サットンの愛称)は確実に速いから、それを抑えることだけに集中した」と語ったイングラムが勝利を収め、最終戦ブランズハッチを前にランキング上位3名が7点差にひしめく混戦状態が生まれた。

「1年中、脚本が書かれているようなものだね! 前輪駆動と後輪駆動の素晴らしい組み合わせがあり、続くブランズハッチは僕らのホームサーキットだ。苦手のシルバーストンで選手権首位奪還を果たせたし、ブランズを楽しみにしているよ」と語るのは、この週末に6位、4位、そして2位と貴重なポイントを積み重ねて、リーダーに返り咲いた王者サットン。

 一方、前人未到の記録となる5度目のBTCCタイトルを狙うターキントンは、苦戦の週末を「まるで銃撃戦にナイフで挑んだようなもの」と語りつつ、首位と27点差のランキング4位から「逆転の希望は捨てない」との意気込みを語った。

「レース1から打つ手がなく、接触で大きく出遅れた。シルバーストンのようなトラックで、エクストラパワーが不足している場合(選手権首位のため共通ハイブリッド使用不可)、できることは何もないんだ。苛立つ週末だったよ」

 実質4人の争いに絞られた2022年のタイトル決定戦、最終ブランズハッチは10月8~9日に決着の日を迎える。

今季は名門WSRより参戦するジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)は、首位と5点差で最終戦へ
首位に立ってからも「また不運が起きて上手くいかないのかと不安になった」と明かしたレース3勝者トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)
最後は2位表彰台に喰い込んだ王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が選手権首位で最終戦へ
この週末までリーダーを守ってきた“4冠王者”コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)は、共通ハイブリッドの助けが得られず苦しむ結果に

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