中世オランダの街並み再現に尽力 ハウステンボス元専務・高田さん「世界に誇れる場所」

ハウステンボス開発時のエピソードなどを語る高田さん=大村市

 大浦天主堂キリシタン博物館副館長の高田征一さん(77)=長崎県大村市=は佐世保市のハウステンボス(HTB)開業当初、専務として運営にかかわった。親会社がPAGになったことについて「本県の資産。価値が認められたと思う。いろんな魅力をつくる可能性がある場所」とし、HTBのさらなる発展を願っている。
 高田さんはHTB創始者の故神近義邦氏と二人三脚で旧長崎オランダ村(西海市)から始まるプロジェクトに携わった。HTBは県が造成した旧針尾工業団地(総面積152ヘクタール)の敷地に開設。中世オランダの街並みを再現し、1992年に開業した。設計した日本設計の故池田武邦氏の哲学が反映され、自然と共存する街の創造を試みた。高田さんは「ゼロからの前例のない仕事。まさに未来都市の考えだった」という。
 12世紀に漁村が生まれ、貿易が栄えて発展するオランダの歴史にならい街並みをデザインした。植物が育つ土壌改良に始まり、自然石で運河を整備。海に汚水を流さない下水処理システムを導入し、環境保全を徹底。街の中央部にゴーダ市庁舎を模したスタッドハウスを配し、オランダ王室の宮殿「パレスハウステンボス」を、王室の許可を得て再現した。庭園、広場と随所の景観にもこだわった。「素晴らしい頭脳が集まって都市が形成された」と振り返る。
 高田さんは現地で建物の調査、政府との交渉役を務めた。アミューズメントや飲食施設、ホテルなど、敷地内の建物はおよそ200棟。「オランダの12州の象徴的な建築物をHTBの各エリアに配置した。設計図をいただいたり、オランダと一緒に造り上げた。レンガ1個からの交渉だった」
 JRハウステンボス駅の開業、交通アクセスなど、周辺のインフラ整備が進んだ。「九州全体のいろんな力に支えられた」と産業の発展へとつながった要因を強調する。
 高田さんは1999年末に辞任。その後、HTBは経営破綻やHISによる再建など、曲折を経てきた。そして、香港を拠点にするPAGに売却され、新たな局面へと向かう。
 PAGはテーマパーク事業を拡大する方針。「張りぼてではない本物のオランダの街。世界に誇る施設。広大な土地も魅力で、アジア最大の拠点になる可能性がある。新しくなったハウステンボスにも行ってみたい」と思いを語る。


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