「夢を諦めないで」 あしなが育英会奨学生ら 3年ぶり長崎で募金活動

街頭募金を呼びかける本多さん(右)と島田さん=長崎市内

 病気や災害などで親を亡くした子どもを支援する「あしなが育英会」の大学奨学生らが1日、3年ぶりに長崎市で募金活動に取り組む。メンバーで活水女子大1年の本多かん奈さん(19)も3年前に父を亡くし、奨学金で夢をつなぐことができた奨学生の一人。「金銭の問題で夢を諦めないで」。同じ境遇にある遺児らへの思いを胸に、街頭に立つ。
 本多さんは雲仙市出身。3年前の夏、長崎市立長崎商業高1年で、親元を離れ西彼長与町の祖父母宅から通学していた。夏休みで実家に帰省した日の翌朝、「バタン」と父=当時(50)=が倒れた音で目が覚めた。心筋梗塞だった。別れの言葉も言えないまま父は帰らぬ人となった。
 せっかく帰省したのに、反抗期でろくに父と会話もしなかったことを、今も後悔している。
 どうやって暮らしていけばいいのか。学校は。将来は-。父を亡くし途方に暮れていた時、部活の顧問から「あしなが育英会」の奨学金を紹介された。家族で相談し申請。奨学金を受け、無事に高校生活を送ることができた。
 元々、家庭の経済的な事情から卒業後は就職するつもりだったが、大学でも奨学金がもらえることを知る。「得意な英語をもっと学びたい。将来はグローバルに働きたい」。そう考え進路を変更。外国人に日本語を教える日本語教師になりたいと考えるように。
 今春、大学に入学。外国語や日本文学、歴史などについて学ぶ日々だ。「夢のまた夢」だと思っていた海外留学も、あしなが育英会の海外研修制度で手が届く目標になった。「イタリアで日本語教育について理解を深めたい」と本多さん。
 同会の広報担当を務める島田北斗さん(29)=長崎市出身=によると、県内の奨学生は3月現在で高校生89人、専門学生14人、大学生50人の計153人。全国は計8429人。「遺児の進学を守り続けるため、奨学金の必要性を知ってもらいたい」と話す。
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 大学奨学生らによる街頭募金は新型コロナウイルス流行の影響で3年ぶり。1日午前10時~午後6時、長崎市茂里町のみらい長崎ココウォーク前で、県内の奨学生、高校生ボランティア計約30人が呼びかける。

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