「おとこのからだ」を愛する展覧会 〝イケメン画家〟木村了子「生きる喜びを感じています」

東洋の美しい男性〝イケメン〟をモチーフとした作品で知られる木村了子がキュレーターを務め、13人の作家による「男性ヌード」をテーマにした展覧会「NUDE礼賛!おとこのからだPraise of NUDE―About Male Body」が30日、東京・千代田区のDub Gallery Akihabaraで開幕した。ジェンダー、表現方法が異なる多彩な男性像が一堂に会し、木村は「想像以上にクオリティーが高くて感動しています。ジェンダー観の多様性、表現の可能性を探るきっかけになってもらえれば」と語った。

女性像を手がけていた木村は2004年、性愛の対象である男性を日本美術の画法、スタイルで描く活動を開始。イケメンを描く喜びを得るとともに、〝女は描かれるもの、見られるもの〟といったしがらみからの開放を実感した。「人の性愛は耽美的だが、まぬけで愚かしくもある。そこに人としての本能や色気、愛おしさを感じる絵を描きたい」という信念が、イケメン画によって深化。賛否両論がありながらも評価を高め、坂本冬美のシングル「ブッダのように私は死んだ」のジャケットを担当するなど、多彩な活動を続ける。

男性ヌードのキュレーションを務めるきっかけは、昨年に埼玉近代美術館と島根石見美術館で開催された「美男におわす」への出品だった。江戸時代から現代までの、日本における美少年、美青年のイメージを、浮世絵・日本画・彫刻・挿絵・マンガ・写真などのジャンルから紹介する展覧会。「日本の公的な美術館で、男性像が取り上げられることはほぼなかったので、とてもうれしかった。男性像の中でも男性ヌードを、女性ヌードのように一堂に会する機会をつくりたくなった」と決意した。

木村了子「目覚めろ野性!水墨鰐虎図」の屏風絵はフォトスペースに=都内

女性が男性を愛するという事象に反して、女性が性愛の対象である男性像を描く行為は、美術界ではマイナーである。しかし、イケメン画を描き始めた2004年からの変化も感じる中、男性像でもさらに光が当たりにくい男性ヌードを取り上げた。

自身も含めてエセム万、大山菜々子、上路市剛、亀井徹、田亀源五郎、小川クロ、TORAJIRO、成瀬ノンノウ、野村佐紀子、松蔭浩之、ユゥキユキ、三島剛(特別参加)と13人の現代作家による作品が集結。例えば、上路市剛の作品はリアルで巨大な四天王の頭像だが「頭部の下に存在するだろう肉体を想像すること、〝マスクはパンツ〟と言われるようなコロナ禍では、この大きな顔が新たな意味を持つのではないか」と述べるように、男性ヌードの多様な解釈を認めている。

絵画、造形、写真、映像など多種多様な作品が集結。木村は「一つの性を扱うことは批判の対象になり得るかもしれない。それでも一つの性に対する、さまざまな作品を見ることで、ジェンダー観の多様さを感じることができました」と語った。「女性ヌードは男性からの〝性の対象〟であり、女性からの〝自己の投影〟であるといったものと同様に、私は男性ヌードにある種の思い込みを持っていたのかもしれません。参加作家の素敵すぎる男性ヌード作品に『生きる喜び』を感じています」と続けた。

同展は10月15日まで開催。入場料500円。日曜、祝日は休館。開館時間などの詳細は同ギャラリー公式サイトまで。

「NUDE礼賛!おとこのからだPraise of NUDE―About Male Body」会場の様子=都内
「NUDE礼賛!おとこのからだPraise of NUDE―About Male Body」会場の様子=都内

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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