「北九州ロックフェスティバル」SDGsスピリットで参戦!

9月24日(土)、北九州市小倉北区の「ミクニワールドスタジアム北九州」で開催された、3年ぶりの野外の音楽フェス「北九州ロックフェスティバル2022 with SDGs spirits」。晴れ渡る秋空、心地よい風の中で、発起人・泉谷しげるさんをはじめ、豪華アーティストの皆さんのステージが繰り広げられました。

音楽フェスの文化に、これまでになかったSGDsを加味した本イベント。心に刻まれた熱い場面を思い出しながら、SDGsスピリットで参戦レポートをお届けします。感謝と御礼を込めて——。

ステージを通して気づかされた「多様性」の面白さと大切さ

オープニングのトップバッターは地元自由ヶ丘高等学校チアダンス部のステージ。お客さんだけでなく、まるで本フェスを応援しているかのようでした。続くは「身長150cmちびっこシンガーソングライター」杉山瑞紀さんでビシビシ元気づけられます。かと思えば結成10周年、3人編成のヴィジュアル系バンド「首振りDolls」熱狂的なパフォーマンスで会場にインパクトを残します。

オープニングだけでエンタメ域の広さと深さが感じられる中オープニングトークへ。発起人・泉谷しげるさんを交え、北九州市出身175R・SHOGOさんと地元ラジオパーソナリティーなどでおなじみ立山律子さんが敬意と愛着をもって進めるMCが心地よく響き、本編がはじまりました。

175Rの不偏の青春パンクは凱旋の感動に重なって、一気に会場の空気があたたまるのを感じました。次の岡崎体育さんは北九州初登場。「はじめまして」の人たちをトントン拍子に巻き込んでいく圧巻のパフォーマンスで、観客のボルテージは一気に最高潮に。その路線延長のようなゴールデンボンバー。MCを通して「6曲披露する中で『女々しくて』は6曲目にやります」と登場前にアナウンス、という粋な計らい(?)で、出番前から笑いをさらうなんてさすが!初見の人やちびっこへの気遣いをしつつ、笑える幸せを撒き散らしてくれました。続くOriginal Loveで、会場全体、大人な雰囲気に酔いしれました。アンサンブルが軽やかに楽しく美しく響くとき、秋風もまた気持ちよく響いていたのが印象的でした。

7ORDERはなんと今回のステージが、野外フェス初体験!とのこと。その記念すべき日を祝うように盛り上がりを見せ、その感動は共有されて場内に幸せな空気が漂いました。続くは森高千里さん。「キレイ」と「可愛い」が共存する魅力的な森高さんは、両サイドを駆けながら、カッコ良い名曲たちを披露。男女問わずの不動の人気でした。ダンスロックバンドのDISH//は圧倒的な熱量で元気と勇気を届けてくれました。また夕暮れ間際の空の色に溶け込むような名曲は心に染み入りました。

ももいろクローバーZの頃には夜空になりつつあり、ペンライトが会場を彩りました。エンタメ性が高い圧巻のももクロのステージはファンの人たちとの一体感を含めて感動的でした。ラストは泉谷しげるwith BAND。シンガー歴半世紀を越えてもなお人々を魅了し続ける泉谷さん。発起人であることから、朝からMCをはじめ休むことなく動いていらしたにもかかわらず、名曲の数々を熱唱。とてもパワフルで熱いステージに心の震えが止まりませんでした。

グランドフィナーレではMCを務めたSHOGOさん、出演した175R、7ORDERをはじめ、ボランティアの大学生スタッフの皆さんまで登壇し、泉谷さんの楽曲をみんなで楽しむ形で、イベントは無事に終了しました。

約10時間におよぶひとときを振り返って、音楽を届ける人、それを受け取る人、その環境を創る人…本当にさまざまな属性や立場など異なりを越えて、思いを共有しながら目標に向かい、私たちは支え合っているのだなぁとあらためて思い考えさせられました。一人ひとりが生き生きと活躍し合うこと、それが「支え合い」に育ち、その支え合いは循環型社会を築く足掛かりになるのでは、と思ったのでした。

だれもが公平に快適に過ごせて楽しめるように

コロナ禍がつづく中で、「変えるべきはフェスの方じゃねえかな?」という泉谷さんの問いかけ。本フェスではそれにこたえる試みがいくつもされていました。

平素はこのような光景が広がるスタジアム。設営でフェス会場へと変身したアリーナ席は、みんなが快適に過ごせるようにと、ブロックごとに余裕をもって広さが確保されていました。また、物販・飲食エリアやトイレの混雑状況が分かるよう、公式アプリを利用するとスムーズに動けるという工夫も。そして、スタジアム自体も「快適」そのものではないでしょうか。車いすの人もこうして安心した居場所があり楽しめること、トイレが清潔でユニバーサルデザインかつ温便座というのは、TOTOが本社を構える北九州市にあるスタジアムだからなのではと感じます。男子トイレに赤ちゃんのおむつ替え場所があるなど、子ども連れであっても来場しやすい、誰もが安心できる設計はお守りのように心強いものです。

スタジアムは海沿いにありながら向こう側に山が見えるという自然を感じられる一方、新幹線も停まる小倉駅から徒歩10分もかからないという絶好のアクセスも魅力です。

「循環するまちづくり」に思いを寄せて

隣の西日本総合展示場ではタイアップイベントがあったり、あさの潮風公園には屋台ブースがあったりしました。

持続可能な都市、消費と生産、というのもSDGsの一つです。飲食店では自然素材を使用した食器を使ったり、充電スポットでは稼働のために太陽光発電であったり、出店している各所でできることに最大限取り組んでいました。

ゴミの分別回収はもちろん行っていましたが、古紙をトイレットペーパーに再生、ペットボトルのゴミを小倉織とコラボしてグッズ制作を、なんて取り組みも面白そうです(しかも「来年の北九州ロックで活用!」というサプライズなコメントも見逃せないですね!)。家庭で使いきれない未使用・未開封食品を持ち寄ってもらい、要支援世帯や福祉施設へ寄贈する『フードドライブキャンペーン』も実施されていました。

「『SDGs』という言葉にとらわれないで」と言っていた泉谷さん。その言葉の裏にあるのは、型にはまらずに出来ることからやろうよ、ということだと筆者は受け取りました。循環社会の実現に「続ける」は必須。そのために大切なことだと思うからです。

御縁と御縁がつながって…

本フェスの発起人・泉谷しげるさんは「阿蘇ロックフェスティバル」の発起人でもあります。2015年から続く阿蘇ロックは2019年、熊本大地震・阿蘇山噴火の影響でその年は、ミクニワールドスタジアム北九州で開催。2017年に誕生したミクニスタジアムは音楽イベントを熱望してきたこともあり、阿蘇ロックが志そのままに場所を北九州に移して行われたのでした。阿蘇ロックでの出演をきっかけに泉谷さんから声がかかって、今回の北九州ロックフェスに出演となったアーティストも。

そのストーリーのような人と人とのつながり、心や志の交流に、筆者は静かに感動しました。自然災害もコロナ禍も思うようにはいかない。けれど、出会いが出会いを呼び広がっていく感じが、街づくりとして頼もしく思えてくるのです。MCのところどころで、泉谷さんのことを敬意と愛を込めて「オヤジ」と呼ぶSHOGOさん。泉谷さんも寛大に受け止め、嬉しそうに歯に衣を着せぬおしゃべりで観衆を魅了していました。

そのやり取りをほほえましく見ていた筆者ですが、見えないバトンを受け取った気がしました。ものづくりの街・北九州。一つ一つの誰かのストーリーがつながって今があるのなら、繋がった私たちも街づくりで新たなストーリーを紡いでいきたいと思ったのでした。

※2022年10月1日現在の情報です

(ライター・しまだじゅんこ)

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