<社説>ロシアが4州併合宣言 国際秩序破壊する暴挙だ

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナで制圧した東南部4州の運命はロシアと共にあると述べ、併合を宣言した。一方のウクライナ側は全土奪還を目指すと表明している。ロシアは必要であれば核を使用することを明言している。今後、4州を巡る攻防で「領土防衛」を口実に核使用を正当化するのは断じて許されない。 ロシア憲法が領土割譲を禁じていることも根拠にするだろう。併合に対し欧米諸国は国際法への重大な違反と断じ、国連のグテレス事務総長も国連憲章違反と明言した。併合は国際秩序を破壊する暴挙だ。ロシアは孤立を深めるとみられる。

 しかし最も恐るべきことはロシアが核を使用し、多大な犠牲を出すことや、これに応酬することで第3次世界大戦に発展する可能性だ。これらを何としてでも避ける道を世界の人々が英知を出し合い探る時が来ている。

 併合されるのは今年2月にロシアが親ロ派の独立を承認した東部ドンバス地域のドネツク、ルガンスク両州と南部のザポロジエ、へルソン両州。親ロ派支配地域はドネツク州で約60%、ザポロジエ州で約70%だったが、プーチン政権と親ロ派は併合手続きを異例のスピードで強行した。

 背景にはプーチン氏の焦りがある。ウクライナの反転攻勢でロシア軍の敗走が相次ぎ、一層の戦況悪化を避けるため占領地を「自国領」に確定する必要に迫られたとみられる。兵員不足解消に向けた部分動員令を進めるため「軍事作戦の成功」を祝賀し挙国一致ムードを高める狙いもあった。

 しかし、30万人規模を戦場に送り込む部分動員令はロシア国民からの反発と混乱を招いた。ロシア政府はウクライナへの侵攻を「戦争」という言葉を使わず「特別軍事作戦」と主張してきたが、国民が「戦争」を身近に実感する機会を与えたのだ。9月下旬の独立系世論調査機関の調査では47%が動員令に「不安と恐怖を感じる」と答えた。

 既に動員令を逃れるため、近隣の欧州諸国へ脱出を図るロシア市民が相次いでいる。「人を殺したくないし、自分も死にたくない」との思いだ。戦争はウクライナ市民だけでなく、ロシア市民をも不安と恐怖に陥らせている。

 プーチン氏はウクライナに対し、直ちに戦闘を停止し、交渉の席に着くよう要求した。しかし早期に停戦し、力による併合をただすべきはプーチン氏の方だ。ウクライナ側もロシア側もこれ以上、犠牲を出すべきではない。

 4州併合によってロシアが妥協の道を狭め、双方が歩み寄るのは一層厳しくなっているのは間違いない。しかし、国際社会はこの状況をヒートアップさせるのではなく、核戦争や世界大戦を回避し、停戦に導く方法を粘り強く探る必要がある。核戦争の恐れに直面している今、去る大戦の反省を基に築き上げてきた人類の英知を結集する時だ。

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