上司に求められるもの

 今年のサラリーマン川柳の優秀作にある。〈ウイルスも 上司の指示も 変異する〉。言うことがころころ変わる人に振り回された覚えは、多くの人にあるだろう。少しだけ「上司」の立場を知る身には、一句が他山の石にも思える▲あなたは上司に何を求めますか? 日本能率協会が今春の新入社員に聞いたところ、「丁寧な指導」を挙げたのが7割、「言動が一致している」が4割近くいたという▲かんで含めるように説明する。言動を不用意に“変異”させない。この二つを上司は心得るべきらしい▲「場合によっては𠮟ってくれる」のを求めるのは、10年前の調査では3割台で、今は2割に満たない。若い人を𠮟る時に言葉を慎重に選ぶよう求められる時代だが、「𠮟る」という行い自体、“絶滅”の途上にあるのかどうか▲明治安田生命の調査では「理想の上司」として思い浮かぶのは、男性だと芸人の内村光良(てるよし)さん、女性ではアナウンサーの水卜(みうら)麻美さんが何年も不動の1位という。お2人とも親しみやすいイメージだが、なるほど、「丁寧さ」も備えていそうな感じがする▲少し笑える、昔の「サラ川(せん)」の秀作をお一つ。〈なぜだろう 私がいないと うまくいく〉。部下とうまく接するのにあれこれ惑う人の心情を表すようで、どこか切なくもある。(徹)

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