レッドブル&HRC密着:まさかの燃料不足でアタック断念。チームはフェルスタッペンのピットレーンスタート回避を優先

 F1第17戦シンガポールGPの予選Q3。セクター2を通過した段階で、暫定ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)に対して、コンマ7秒上回る走りを披露してセクター3に入ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。ところが、フェルスタッペンはセクター3の途中でアクセルをバックオフ。そのままアタックを続けた最後のラップでも、ルクレールをさらに大きく上回る区間タイムでセクター2を通過していたにも関わらず、今度はピットイン。まともなアタックができなかったフェルスタッペンは結局、8番手に終わった。

 なぜ、最後の2周、フェルスタッペンはアタックを完結しなかったのか。フェルスタッペンはその理由を次のように語った。

「最初のバックオフは最後にもう1周アタックするつもりだったからだよ」

 しかし、セクター2までにコンマ7秒上回っていたのだから、とりあえずそのままアタックを続けて、暫定ポールポジションをルクレールから奪い返してから、最後にもう一度、アタックに入ることはできなかったのか。フェルスタッペンは言う。

「前にガスリーがいたんだ。あのままアタックを続けると、今度は最後のアタックでガスリーに引っ掛かる。燃料搭載量を考えたら、最後のアタックの方が論理的には速いはずだから、最後に賭けたんだ」

 いったんバックオフしてガスリーとのギャップを築いて、最後のアタックに入ったフェルスタッペン。最後のアタックではフェルスタッペンが言うように、さらに速い区間タイムを刻んで最終セクターへ突入。ところが今度はレースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼから、まさかの「ボックス(ピットインせよ)」の無線。フェルスタッペンは「マジかよ!! いったい、どうなってるんだ」と怒鳴りながらピットロードに向かった。クリスチャン・ホーナー代表はこう説明する。

フェルスタッペンのレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼ

「燃料が足りなくなっていた。あのままラップを続けていたら、明日はピットレーンからスタートしなければならなくなっていた」

 実際、燃料は想定よりも足りなくなっていたが、アタックを完了するだけの量は搭載されていた。しかし、チェッカーフラッグを受けた後、インラップを走らなければならず、さらに車検用にサンプル分を燃料タンクに残しておかなければならない。もし、最後のアタックでピットインせずにコントロールラインを通過していれば、フェルスタッペンはポールポジションを獲得していたかもしれないが、サンプル用燃料を提出できずに、予選失格となり、ピットレーンからのスタートを余儀なくされていたかもしれない。

 それでは、いったい、どの段階で燃料が足りなくなっていたのか? レッドブルから発表はないが、考えられるのは、フェルスタッペンがエンジニアが想定していたよりも高い全開率で最後の2周を走行していたからではないか。なぜなら、フェルスタッペンは残りの2周でルクレールをセクター2まででコンマ7秒上回った後、最後のアタックではなんとコンマ9秒上回る驚速のラップを刻んでいた。アクセルを開ける時間が長くなれば、タイムは速くなるが、燃料はその分、消費する。

 つまり、この日のフェルスタッペンはレッドブルのエンジニアが想定していたより、速く走っていたのだった。

2022年F1第17戦シンガポールGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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