DINKs別財布のアラフォー夫婦。中古マンション購入+リノベーションにいくらかけられる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳、会社員の女性。42歳夫と2人暮らしの相談者。都内の中古マンションを購入し、リノベーションしたいとのことですが、いくらぐらいまでなら老後に支障がないでしょうか。FPの氏家祥美氏がお答えします。


初めまして。いつも参考にさせていただいております。私38歳、夫42歳、共に会社員で、子どもはおりません。現在、東京都内で中古マンション購入+リノベーションで3,000〜3,500万ほどの住宅ローンを考えていますが、老後の資金への影響が不安です。

現在の収入は余裕があるものの、子どもがいないこともあり、定年後に向けて貯蓄を意識した生活を心がけております。いくらくらいまでの住宅ローンであれば定年後の生活も無理がないか(資金が赤字にならないか)、アドバイスいただけますと幸いです。なお、車の購入予定はありません。

希望物件の条件などは次のとおりです。

・広さ40〜50平米程度のペット可マンション

・必要に応じて売却や賃貸で収益を得たいため、立地重視(東京23区内・駅から10分以内)

・リノベーション予定のため築年数はこだわらない

・私の定年(65歳)前に住宅ローンを完済したい(夫の定年は70歳)

・定年後に夫婦どちらかが死亡した場合は、売却や賃貸も検討

家計の状況は、手取り月収夫45万円、妻28万円。夫婦別財布であり、毎月の共通生活費(16万円)、貯蓄分(20万円)を支出した後は、自由費として各自で管理。それぞれ、自由費の中から貯蓄をしています。自由費の内容は、通信費、服飾、交通費、嗜好品など。保険は未加入です。

よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・性別:女性、38歳、会社員、月収35万、想定年収420万(2022年7月に転職)

・夫:42歳、会社員、月収58万、想定年収700万(2022年7月に転職)

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:73万円(夫45万円、妻28万円)

・毎月の世帯の支出の目安:16万円

・住居費:9万9,000円

・食費: 2万円

・水道光熱費:1万5,000円

・お小遣い:夫婦別財布

・その他:日用品5,000円・娯楽(外食や遠出など)2万円

・毎月の貯蓄額:20万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):340万円

【各自の個人資産状況】

・妻の貯蓄:約600万円(現預金320万・株式140万・投資信託100万・iDeCo50万円)

・妻の毎月の貯金:つみたてNISA3万3,000円、iDeCo2万3,000円、投資信託1万7,000円

・夫の貯蓄:約100万円 (内訳不明。現預金・株式・iDeCo・仮想通貨をしているとのこと)

・夫の毎月の貯金:企業型確定拠出年金2万3,000円

【老後資金】

・退職金なし

・公的年金不明(夫婦ふたりとも、新卒以来厚生年金に加入)

・妻:つみたてNISA 40万/年 iDeCo 27万6,000円/年(35歳から加入)

・夫:企業型確定拠出年金27万6,000円/年(42歳から加入)

氏家:ご相談者さんは現在38歳。夫婦共働きで、お互いの収入から生活費と貯蓄分を出し合い、残ったお金はそれぞれが自己管理しています。目下の目標は、都内に中古マンションを購入することで、予算は3,000〜3,500万円を想定しています。

生活費は共同で管理。あとは夫婦別財布の家計

まずは家計の状況から確認していきましょう。現在の手取り月収は妻であるご相談者さんが28万円、夫が45万円です。二人合わせると月額73万円になります。ここから生活費の16万円と、貯蓄20万円を共通で管理していて、残りの37万円はお互いの手元に残った金額ずつ各自が管理しています。

・手取り月収:妻28万円+夫45万円=73万円
・共通の生活費:16万円
・共通の貯蓄:20万円
・残:37万円(各自が自由に管理。通信費や服飾費等も含む)

生活費の16万円のうち、賃貸住宅の家賃が10万円、水道光熱費が1万5,000円、食費2万円、日用品や娯楽が2万5,000円です。ここに書かれた数字を見る限り、堅実な印象を受けます。そのため、生活費を支出した残り37万円がすべて個人的支出として使われているとは思えません。ただし、あくまでも憶測なので、個人の貯蓄には触れないでおきましょう。貯蓄については夫婦共通の財産として毎月固定で貯めている20万円を軸に考えていきます。

ボーナスはありませんので、年間貯蓄額は20万円×12カ月=240万円です。

都内の中古マンションを購入したい

都内に購入を希望する中古マンションは、賃貸や転売の可能性を考慮して、東京23区内、駅から徒歩10分以内と立地の良さ重視で考えています。ペット可で広さは40〜50平米程度を希望していますが、リノベーションを予定しているため築年数にはこだわりません。

予算としてご相談者さんが想定しているのは3,000〜3,500万円。近年、不動産価格が高騰していますが、ざっと調べてみたところこの条件を満たす3,500万円以下の物件はありそうです。ただし、購入時にかかる諸費用やリノベーション費用まで含めて考えると、住宅購入の予算は少なくとも4,000万円程度は見ておいた方がいいでしょう。

夫婦の共通の貯蓄は現在340万円ですが、これ以外に投資や個人的な貯蓄等があるため、共通の貯蓄から300万円を住宅購入資金に充てても困ることはないでしょう。残り3,700万円を仮に金利1%で35年ローンを組むと、1カ月あたりの返済額は10万4,445円になります。現在の家賃よりも5,000円高くなります。ご相談者さんは定年退職までに住宅ローンを完済したいというご希望がありますね。それまであと27年ですから、35年ローンを組んだ場合、タイミングを見て8年分繰り上げ返済をすることになります。

ちなみに、同じく3,700万円を金利1%で最初から27年返済のローンにした場合、1カ月あたりの返済額は13万354円になります。途中で繰り上げ返済をする必要性は下がりますが、月々の返済が現在よりも3万円高くなります。

ローン以外にかかるお金を忘れずに

ここで注意点としてお伝えしたいのは、マンション購入では住宅ローンの返済以外にも管理費や修繕積立金がかかることです。この程度の広さの物件だと新築マンションの場合、両方合わせて月額2万円前後が目安になります。ただし、中古物件の場合には新築マンションよりも修繕にお金がかかりやすいこともあり、値上がりしている可能性があります。また、小規模なマンションだと1軒当たりの負担が重くなりやすい傾向があります。いずれも購入後は同時に継続的にかかる費用ですから、ローン返済額と合わせて修繕積立金や管理費についても考慮して予算計画を立てましょう。

現在お住まいの賃貸住宅の家賃10万円と比べると、マンション購入後は住居費が15万円(住宅ローン13万円+管理費・修繕積立金2万円以上)以上になる可能性があり、1.5倍になりそうです。

この金額を無理なく払っていけるかどうかは、今後のライフプランに関わります。今後も出産や自動車購入の予定がなければ、大きな出費を伴うライフイベントは住宅購入以外に見当たりません。現在、毎月20万円の貯蓄ができていますが、住居費が5万円増えることで毎月の預金額が5万円減っても困ることはないでしょう。

今のまま働ければ老後はそれほど心配ない

ご相談者さんは老後資金が気になっているご様子です。そこで、ここからは老後資金について考えていきましょう。

心配されている点は、以下の2点ではないでしょうか。

(1)子どもがいないこと
(2)退職金が無いこと

最近は子どもがいても、介護などを子どもの世話になろうと考える人は減ってきています。お金の面だけで考えたら、教育費や養育費がかからない分、老後資金準備を早くから始めやすくなります。

厚生労働省の統計によると、大学卒で大企業に入社して定年まで勤続した男性の退職金の平均額は2,230万円と言いますから、これだけの金額をもしも夫婦でもらえていたら……と思ってしまいそうなところですが、心配はいりません。

ご相談者さんの家計にはこのようなメリットがあります。

(1) お二人とも正社員として働いている
(2) 退職年齢が65歳以降

お二人とも正社員として働いて厚生年金に加入しているので、老後は二人で老齢厚生年金を受け取れます。しかも、妻の定年は65歳、夫の定年は70歳ということで、ご夫婦とも長く正社員として働けます。老齢年金の受給開始年齢が65歳ですから、定年まで働けば収入の空白期間がありません。

現在すでに、iDeCoやつみたてNISAを始めていますが、これを可能な限り継続しましょう。iDeCoは2022年5月からの制度改正で、国民年金の加入者であれば65歳まで加入できるようになり、働き続けている人は60歳以降も積み立てができるようになりました。会社員であれば、厚生年金加入者として国民年金を払い続けているため、65歳まで拠出ができます。NISAについては恒久化なども求められていますが、2022年9月段階では非課税投資期間は最長で20年間、制度は2042年までとなっています。

ご夫婦の死亡保険に加入しましょう

ここまで書いてきたように、住宅を購入しても老後はさほど心配なさそうです。私からのアドバイスとしては、むしろ死亡保障への備えです。

ご相談者さんご夫婦は保険に加入していません。パートナーに万が一のことがあっても、小さな子がいるわけではないのでそれまでと変わらず仕事をしていけばいい、という考えが根底にあるのかもしれませんね。

しかし、お子さんのいないご夫婦には、遺族基礎年金がありません。夫に万が一のことがあった場合、子どものいない妻は遺族厚生年金だけを受け取れますが(30歳未満の場合は5年間のみ)、子どものいない55歳未満の夫は遺族厚生年金も受け取れません。

住宅ローンには団体信用生命保険があるため、契約者に万が一のことがあればローン残高の支払いが免除されます。しかし、夫だけがローンを組んで、妻に万が一のことがあれば、夫はその後も変わらずローンの返済を続けることになります。

万が一の時の負担や後悔を考えると、あまり保険料が負担にならない掛け捨ての定期保険や収入保障保険等で、ご夫婦それぞれの死亡保障を備えておくことをお勧めします。

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