オスプレイ機体「未知の部分」 防衛省、長崎県内で訓練計画 米軍、事故相次ぎ一時飛行停止

飛行訓練で、陸自相浦駐屯地に飛来したオスプレイ=7月26日、佐世保市大潟町

 相次ぐ事故を理由に米空軍が8月中旬、輸送機CV22オスプレイの飛行を停止した。翌月、飛行再開を決定したが、防衛省も米軍からの情報収集や陸上自衛隊のV22オスプレイを追加点検するなど対応に追われた。長崎県内では7月末にオスプレイを使った初の訓練が行われ、年数回程度の訓練が計画されている。防衛省は安全性を強調しているが、専門家からは「新しい型式の機体。(そういうものには)未知の部分は残っている」との指摘も出ている。オスプレイの実態を改めて探った。
 陸自のオスプレイは有事の際、自衛隊員らを島しょへ輸送する役割を担う。陸自の離島奪還部隊「水陸機動団」の本部と主力部隊は佐世保市の相浦駐屯地に置かれているため7月末、同駐屯地などで初の飛行訓練が実施された。
 米空軍が飛行停止した理由は「クラッチの不具合」。動力をプロペラに伝える部分だが、離れたクラッチが、再びつながる際に衝撃が発生するという。米空軍と海兵隊、そして陸自が運用するオスプレイは基本的な性能や構造は一緒でクラッチの場所も同じ。米空軍は飛行を停止したが、米海兵隊は2010年から同様の問題を把握し対応しているとして、飛行継続の意向を示していた。防衛省も16年に海兵隊からこの情報を共有し対策を取ってきたという。しかし、この現象の原因は分かっていない。
 オスプレイの特徴は、ヘリなど回転翼機のように垂直に離着陸できる機能と、固定翼機の長所である速度や長い航続距離を持ち合わせる点。エンジンを収容した翼の円筒部分「エンジンナセル」を動かし、回転翼モードと固定翼モードに転換しながら運用する。
 オスプレイには操作ミス防止の飛行制御システムがあるなど「人的ミスが起きる可能性は局限されている」(防衛省)。ただしモードの転換はパイロットが手動で操作。その際、速度の遅い状態で固定翼モードに近づけると機体が前のめりになるため、コンピューターで制御するという。
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 九州大大学院工学研究院の東野伸一郎教授は、回転翼機と固定翼機の機能を併せ持つ点に関し「ヘリと固定翼機では、そもそも操縦方法が違う。非常に難しい技術だ」と解説する。転換時には、回転翼機でも固定翼機でもないような動きを機体がすることがあるという。防衛省なども「(オスプレイの)機体の構造は複雑」と認めている。
 パイロットは何回も反復練習することで「こういう操作をしたら機体がこういう反応をする」というのを身体で覚える。東野教授は「米軍もこれまでに得られたことをフィードバックしながら、安全性、飛行のノウハウを積み重ねていっている途上ではないか」との見方を示す。
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 オスプレイを巡っては今年3月にノルウェー、6月には米本土でそれぞれ墜落事故が起きたばかり。では米軍の他の機体と比べて安全性はどうなのか。
 防衛省は、米軍機の事故率(10万飛行時間当たりのクラスA事故、12年8月時点)を公表している。それによると30機種のうちMV22オスプレイは下から12番目。ただし「米軍は機種ごとの事故率を全て公表しているわけではない。新たに示せるもの(データ)はない」(防衛省)。このため、これ以降の推移は分からない。さらに防衛省自身がかねて「事故率は安全の一つの指標だが、操作ミスなど機体以外の要因で起きる事故もある」と強調。事故率のみで安全性を評価することは適当ではないとしている。
 東野教授は「オスプレイは新しい型式の機体。ヘリの技術などはある程度応用できるだろうが、やはり未知の部分は残っている」とした上で「新しいものにはリスクがつきもの。メリットとデメリットのバランスでどう考えるか」とする。
 ある陸自幹部は、オスプレイに関する防衛省や自衛隊の情報発信に疑問を呈する。「安全と言うのならそれを信じるしかないが(現状は)安全性などをはっきりと説明できていない。(オスプレイの飛行、配備について)国民の理解、協力を求めるならばもっと情報を出すべきだ」


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