秋の山「準備しっかりと」 目立つ初心者の遭難、通報…埼玉県警が警鐘 7、8月の山岳遭難、過去最多タイ

日頃から捜索救助訓練を実施している埼玉県警山岳救助隊

 埼玉県内で7、8月に発生した山岳遭難は15件、遭難者は17人で前年同期に比べて1件、3人増加したことが、県警のまとめで分かった。遭難件数と遭難者はいずれも県警が統計を開始した1995年以来、2017年と並んで最多タイ。死者は5人(同2人増)で、過去5年間と比較すると最も多かった。

 県警地域総務課によると、死者の態様別は「発病」2人、「転落」2人、「滑落」1人。遭難の主な態様は「転倒」「滑落」「道迷い」だった。登山届は3494件で、前年同期比845件増加。3年前のコロナ禍以来、密を避けるために屋外で楽しめる登山を始めたり、アウトドアで登山が人気なことが、登山者が増えた要因と考えられる。

 だが同課によると、登山経験1年未満の登山者が遭難してしまう割合が増加。装備不十分や知識不足のまま山に登り、不測の事態に対応できなくなって通報するケースが目立つという。地図を持たないで出かける人もいる。

 県警は、今年6月27日に日本山岳ガイド協会と協定を結び、登山届受理システム「コンパス」を運用。登山届の提出促進と捜索救助活動の迅速化を図るのが目的で、スマートフォンのアプリなどを通じて登山山域や目的、ルートのほか、同行者や緊急連絡先などを打ち込むと手軽に計画書が作成できる利点がある。

 「コンパス」での登山計画書登録者は7、8月で417件、346件と徐々に浸透。昨年1年間で県警への登山届の提出約1万9千件のうち、80%が手書きだったが「コンパス」運用後の2カ月は手書きの割合が69%に下がった。

 同課は、行楽シーズンとなる秋の山は日暮れが早く、山頂付近では寒さが出てくるなどの注意点を指摘した上で、「登山計画書の提出や事前準備をしっかりとやり、自身の体調や経験に合った無理のない登山をしてほしい」と促している。

 一方、水難事故は9件、水難者は11人(同期比1件減、1人増)。死者は3人増の7人だったが、寄居町鉢形の荒川で8月に高校1年生の女子生徒が溺れて亡くなったほか6人は原因不明だった。

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