学び諦めず 子どもに背中を押され、子育て・仕事と両立 沖縄・泊高校定時・通信制課程で卒業式

 泊高校で25日、定時制(午前・夜間部)、通信制課程の生徒計45人の卒業式が開かれた。卒業生は年代も境遇もさまざま。45人は華やかに装飾された会場に集まり、教職員や家族らが見守る中、卒業証書を受け取った。

 「お母さんおめでとう」。卒業式の後、小学校4年生の女の子が満面の笑みで母親に駆け寄り、ヒマワリの花束を手渡した。そばには6年生の男の子もいる。「ありがとう」。河口恵伊子さん(41)は誇らしげな表情で花束を受け取り、娘の頭をやさしくなで、息子に笑顔を向けた。

 河口さんが泊高校に入学したのは2019年、38歳だった。10代のころに友人や教師との人間関係に思い悩み、当時通っていた高校を中退。20歳で長女が生まれ、さらに2人の子が生まれた。

 子どもを育てながら就職先を探すことはとても難しかった。幼い子どもを抱いて面接を受けたこともあった。役所に相談に行っても専門用語を理解できず、足が遠のくこともよくあった。それでも、子どもたちとの生活は幸せだった。

 一方で、高校を卒業できずにいたことをずっと後悔していた。

 「お母さん、学校行ってみたら?」。大学進学が決まった長女の一言に背中を押された。「子どもたちに、諦めないことの大切さを教えられるかもしれない」と考え、2度目の高校生活をスタートさせた。

 仕事、育児、勉学の両立は想像以上につらかった。夜中に、疲労と睡魔に襲われながらリポートをまとめたり、「一分一秒無駄にできない」と、隙間時間には校内のベンチで勉強したりした。つらいときに頭に浮かぶのは、子どもたちの顔だった。困難を何とか乗り越え、25日、無事に卒業証書を受け取った。

 この日、県外の大学に通う長女は会場に来られなかったが、長男と次女、そして河口さんの母親、姉がお祝いに駆け付けた。「今度は私が、子どもたちの背中を押してあげる番だ」(河口さん)。ヒマワリの花束を持ち、自信に満ちた表情で話した。

 (嘉数陽)

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