株価が10倍を超えるものも。アベノミクス後の10年間で株価が最も上がった銘柄、下がった銘柄の特徴とは?

9月27日に安倍晋三元総理の国葬が行われました。第二次安倍政権が誕生したのは2012年12月で、デフレ脱却を目的としたアベノミクスと呼ばれた経済政策が行われてから今年はちょうど10年の節目となります。アベノミクスは、1.大胆な金融緩和 2.機動的な財政政策 3.民間投資を喚起する成長戦略 の3本の矢からなっていました。

安倍元総理が退陣されてから菅政権、現在の岸田政権までアベノミクス路線は踏襲されており、その影響は現在も大きく残っています。本稿ではアベノミクス前と現在とを比較して10年間の日本経済や株式市場の変化についてご紹介します。


まず、経済の規模を表す名目GDPの変化です。2012年度は499兆円だったのに対し、昨年度は541兆円です。コロナ禍で消費などが抑制されている影響もあるなか、他国と比べて物足りなさはあるものの日本経済が一定の成長を遂げたことがわかります。

続いて労働市場を見ていきましょう。失業率は2012年末の4.3%から今年の7月現在で2.6%まで低下しました。さらに、日本全体の就業者数は6263万人から6734万人まで約500万人増加しました。筆者はアベノミクスによる最大の成果は、働きたい意欲のある人が働ける状況を作ったことにあると考えています。自民党の支持率は20代や30代の若者の間で高いとのデータがありますが、その理由は労働市場改善の恩恵を最も受けた世代だからなのではと推測しています。

続いて株式市場の変化を見ていきましょう。日経平均は2012年の年末時点で10,395円でした。今年の9月27日の終値は26,571円ですので約2.5倍に上昇しました。一時は3万円を回復したのは皆様ご存知の通りです。このように日本経済や日本株はこの10年で基本的に回復傾向を辿ってきました。必ずしもアベノミクスによる成果ではないとの指摘もあると思いますが、筆者は基本的に良い経済政策が行われたと評価しています。

それでは最後に10年間で最も上がった株や下がった株を見ていきましょう。皆さんご存じの日経平均採用銘柄についてご紹介します。現在の日経平均採用の225銘柄のうち、2012年末と株価を比較可能だった217銘柄について集計を行いました。

騰落率のベスト20・ワースト20はそれぞれ以下のとおりです。

日経平均採用銘柄の騰落率ベスト20

日経平均採用銘柄のなかで最も上昇したのはエムスリー(2413)でした。エムスリーはソニーグループ(6758)の持分法適用会社で、医療関係者向けの情報提供プラットフォームの提供などを行っています。これまで製薬会社の営業員からの情報提供に頼っていた部分をデジタル化して便利にするという事業は非常に需要が大きく、以下の通り長期的に業績は高成長を続けてきました。約10年間で株価はなんと12倍近くに上昇しています。

続いて騰落率2位はソニーグループです。一時は巨額の赤字に悩まされていたソニーもPC事業をやめるなど事業を大胆に選択と集中し、大復活を遂げました。ソニーも右肩上がりの成長を遂げていることがご覧いただけると思います。約10年間で株価は10倍超まで上昇しました。

騰落率第3位は東京エレクトロン(8035)です。世界第4位の半導体製造装置メーカーで、世界トップのシェアを誇る分野もあります。スマートフォンなどが爆発的に普及したことにより、売上・営業利益ともとてつもない伸びを見せました。

続いて残念ながらパフォーマンスの悪かったワースト20銘柄を見ていきましょう。

日経平均採用銘柄の騰落率ワースト20

最もパフォーマンスが悪かったのはシャープ(6753)で、株価は3分の1以下にまで下落しています。資本も変わり復活を目指してきたシャープですが、株価のパフォーマンスという意味では厳しい状況となっています。業績は最悪期からは回復しているものの、売上・利益とも伸び悩んでいることがご覧いただけると思います。

続いてワースト2位は三井E&Sホールディングス(7003)です。造船や海洋開発などを手掛ける総合エンジニアリング会社です。シャープ同様に株価は10年間で1/3以下にまで下落しており厳しい状況です。業績も5期連続営業赤字となるなど非常に厳しいものとなっています。

これまでご紹介した5つの銘柄を見ると、株価が上昇した銘柄は業績好調で利益が大きく増え、株価が下落した銘柄は業績が低調で利益が大きく減っていることがご理解いただけたかと思います。

このように、株式投資では企業の業績と株価は中長期的に強い相関関係にあります。そのため、これから株価が上昇する銘柄を探して投資する際には、今後利益が増えていく銘柄を探すことが非常に大切です。

様々な評価があるアベノミクスですが、日本経済の成長や日本企業の業績向上の一因になったことは間違いないと筆者は考えています。安倍元総理はきっと日本のさらなる発展と平和が続くことを願っていらっしゃるでしょう。安倍元総理のご冥福をお祈りいたします。

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