農薬使わず綿花栽培 上富田町で収穫シーズン

収穫期を迎えた綿花の畑。栽培している宇田川梓さん(左)と夫の啓太さん=和歌山県上富田町岩田で

 和歌山県上富田町岩田の畑で、ワタ(綿)の実「綿花」が収穫期を迎え、白い綿ぼうしが風に揺れている。近くに住む宇田川梓さん(33)が栽培しており、収穫は来年1月ごろまで続くという。

 宇田川さんは筑波大学(茨城県つくば市)で農業を学び、25歳の時に大学の同窓生だった啓太さん(33)と結婚。大阪府内で暮らしていたが、2018年12月に出身地の岩田に移住し夫婦で新規就農した。

 ワタは江戸、明治期には日本各地で盛んに栽培されていたが、安価な外国産が輸入されるようになり廃れた。現代では紀南地方でも、ほとんど目にすることはなくなった。

 宇田川さんがワタに興味を持ったのは、自身の肌の不調がきっかけ。刺激が少ない綿素材の服しか着られない時期があり、ワタについて調べてみたところ、国内自給率が0%だということや、開発途上国での栽培では児童労働や農薬による健康被害が問題になっていることが分かり、自分にできることがないかと考えたという。

 宇田川さんは約10アールの畑で、和綿、陸地綿、スーピマ綿という3種のワタを、農薬や化学肥料を使わずに育てている。啓太さんらに協力してもらい、4月に耕うん、うね作りをし、5月には種まき。6月以降は草取りなどをする。夏になるとハイビスカスに似た花が咲き、それがしぼんで1カ月ほどたつと、果実が割れて、中から綿花が現れる。9月から翌年1月ごろが収穫期だ。

 収穫した綿花は、県外のアパレル業者に出荷。1年目は11キロ、2年目は54キロ、昨シーズンは68キロと順調に収穫量を伸ばしてきた。

 今のところ収穫した綿は出荷のみだが、将来的には自ら紡いで布にし、服に仕立てるという夢があり、すでに糸紡ぎや機織りの道具も準備している。

 6歳と3歳の子どもの母親でもある宇田川さんは「農業は子育てと似ていて、手をかければかけるだけ返してくれる。輸入綿は開発途上国での問題もある。みんなが幸せなかたちで続けられる農業ができれば」と話している。

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