上流階級編的“渡る世間は鬼ばかり”!? 映画「ダウントン・アビー」でゲイ執事・バローさんの人生の歩み方がスゴい!

__映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム__
「まくのうちぃシネマ」第37回目

エリザベス女王崩御〜チャールズ3世即位のニュースが吹き荒れた9月。
英国王室は「開かれた王室」と掲げているだけに、映画やドラマの題材になることが多く、これをきっかけに英国王室をもっと知りたい、という人は、故エリザベス女王の父が主人公の『英国王のスピーチ』とか、女王本人の治世を描くNetflixシリーズ『ザ・クラウン』などをご覧くださいな。

で、そんなタイミングで『ダウントン・アビー』。
ご存知かしら? 王室ではなく地方貴族の城を舞台に伯爵家と使用人たちの十数年を描いたドラマがあるのね。これがメタクソおもしろい。例えるなら『渡る世間は鬼ばかり』上流階級編的な。これの劇場版第二弾が公開ですのよ。

ただ、なんせ登場人物多いし、それらのキャラがそれぞれ別々のエピソードを進行させるから、キャラを知らないと厳しいのよね。なので、知らなかったという方は、劇場版の第一弾をまずは観て。冒頭5分くらいで主要キャラ全員の紹介してくれるから(あと、反則技ですが、公式サイトからのリンクで、ドラマ全部を10分で振り返る動画にも飛べます)。

で、そんな中で注目したいのは、伯爵家の下僕から執事にまで上り詰めたバローさん。
彼、ドラマシリーズでもゲイってことが描かれているんだけど、前作の映画ではそこにふか〜く踏み込んでいるのね。ちらっというと、前作では王室の使用人にもゲイがいて……うんぬんかんぬん。ネタバレすると面白み半減なのでこの程度。今作では冒頭からバローさんのそのエピソードの続きが描かれているの! しかも物語の最後に彼の人生が変わっちゃう出来事まで!!

同性愛が禁じられているどころか罪だった時代を舞台にしているからこそ、「そうそう、ひねくれちゃうよねー」と理解できるバローさんの性格。そして、ひねくれていながらも、自分には嘘をつきたくない、という正直者な一面も今作で掘り下げてくれてるんですよ〜。

このまっとうな描写について、脚本のジュリアン・フェローズさんに聞いたんだけど、
彼は「バローさんのような人は、セクシュアリティをオープンにできる今と同じくらいの数がいて、決して少なかったわけじゃないし、むしろ彼らは自分を偽った人生を歩まないと生きていけなかった。生きにくい時代があったからこそ、今の若い方々の自由があることを知らせたかったんですよ」とな。
群像劇の一キャラ、一エピソードだけど、観れば分かる「ほぼ主役」のバローさんのお話。ぜひともスクリーンでご鑑賞くださいませ〜!!

* * * * *

■ダウントン・アビー/新たなる時代へ
ストーリー/ランサム伯爵家に映画撮影のロケ依頼が舞い込み、屋敷の修繕費捻出のためにそれを受けいれることに。一方、大奥様のバイオレットには、フランスの貴族からの遺言が届き……。

監督:サイモン・カーティス
出演:ヒュー・ボネヴィル、ミシェル・ドッカリー、マギー・スミス、ヒュー・ダンシーほか
配給:東宝東和
公開:2022年9月30日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96

前のコラムへ

次のコラムへ

© 株式会社amateras