大泣きした菅前総理の弔辞と謝罪ですまない玉川徹氏|和田政宗 一般献花の長い列からも分かるように、安倍元総理への弔意は国民の多くが持っており、国葬実施後のSNSの反応も、「国葬をして良かった」との声が多数だった。各国代表の方々の弔意に応えるためにも、やはり国葬でなければならなかったと実感している。

安倍元総理の国葬と一般献花の長い列

9月27日、安倍晋三元総理大臣の国葬が行われた。世界各国、地域、国際機関から218人が参列し、弔意が示された。各国の代表の方々は、会場入りから献花するまで約3時間かかったが、誰一人文句を言うことは無く、静かに参列されていた。

国葬翌日にはいくつかの国の代表の方々とお会いしたが、皆さん、安倍元総理に対して心より哀悼の意を表されていた。選挙活動中のテロから我が国の民主主義を守り、こうした方々の弔意に応えるためにも、やはり国葬でなければならなかったと実感している。

当日、私は正午に参議院議員会館を出発し、政府が用意したバスで会場の日本武道館に向かった。沿道には一般献花に向かう方々の列が長く伸びていた。初めは地下鉄半蔵門駅から出来ていた列が、最終的に四ッ谷駅を超えて並ぶ形となり、献花まで4時間かかったという方もいた。

夕方になっても献花希望の方が次々に訪れ、最終的に時間を延長し、2万5889人が一般献花された。暑さの中で長時間並ばれて献花された方に、感謝と敬意を表したい。

そして、こうした長い列からも分かるように、安倍元総理への弔意は国民の多くが持っており、国葬実施後のSNSの反応も、「国葬をして良かった」との声が多数だった。安倍総理の業績を振り返る映像も素晴らしかったし、菅義偉前総理の友人代表の弔辞は多くの方が涙した。

菅前総理が国葬で弔辞を述べることが決まった直後にお会いした際、菅前総理は安倍元総理への想いについて、「こうした言い方はどう思うか? 国民はどう感じるか?」と私にお聞きになられた。私からは、「安倍総理に一番お近くで接してこられたわけですから、菅総理の率直な想いは国民の胸に大いに響くと思います」とお答えした。

菅前総理は、弔辞のこととは述べてはいなかったが、弔辞について常にお考えになっていたのだと思う。菅前総理の弔辞は心から思いを込めて練りに練り上げたものだった。

テレビ朝日はどのように責任を取るのか

私は会場で弔辞を聞き大泣きした。周りの国会議員もそうであったし、テレビを見ていた多くの方も涙した。弔辞の後には拍手が自然発生的に起きた。

なお、この弔辞について、テレビ朝日「モーニングショー」コメンテーターの玉川徹氏は、「電通が入っている」と、さも電通が菅前総理の弔辞の内容を考え、用意したかのように述べた。これは当然全くの誤りであり、玉川氏は翌日番組内で訂正し謝罪した。

しかし、これは謝罪で済むような問題ではなく、放送局としての大問題である。というのも、玉川徹氏はテレビ朝日の社員コメンテーターであるからだ。

事実を調べずに、嘘をさも事実かのように確定的に述べるということはジャーナリズムとしてあり得ない。これをコメンテーターである社員が行ったのである。放送法にも明確に違反しており、ジャーナリズム精神にも明らかに反する。テレビ朝日は果たしてどのように責任を取るのか。

玉川氏は当然降板、経営陣が辞任するくらいの重大な問題と考えるが、テレビ朝日はこのままやり過ごすのだろうか。であるならば放送局として終わりであり、免許を与え続けるかどうかについても当然議論となるであろう。

昭恵夫人が涙をこらえきれなかった言葉

菅前総理の弔辞では、安倍昭恵夫人が涙をこらえきれなかった言葉があった。
「武道館の周りには、花をささげよう国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです。明日を担う若者たちが、大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています」

「これが、あなたの口癖でした。次の時代を担う人々が、未来を明るく思い描いて、初めて、経済も成長するのだと」

実際に、一般献花に並んでいる方の列を見ても、20代、30代を中心に若い世代の方が多かった。安倍総理は、給付型奨学金の導入、幼児教育保育の無償化、そしてアベノミクスによる経済成長と、未来を担う世代のために政策を次々に実現してきた。若い世代の圧倒的支持は、まさに安倍総理が実現してきたことの評価の表れなのである。

一方で、「国葬反対」を叫ぶ勢力を一部メディアが後押ししたことにより、世論は引っ張られた。日本は元来、十七条の憲法にあるように「和を以て貴しとなす」という民族性であり、何か対立する意見があっても話し合い、和を以て行動していこうという民族である。神話の世界においても、天の岩戸などで神々は合議してきた。

しかし、今回の反対論は、「反対のための反対」に近く、国論を二分することが目的であったようにも見える。反対論を強く叫んだ人たちの中心には、過去に安倍政権への反対を叫び、対立を煽ってきた人がいる。

このように対立を生み出し世論を分断する手法は、元はコミンテルン(共産主義インターナショナル)が提唱したもので、社会に混乱を引き起こし、革命に繋げるというものである。

極めて高い安倍元総理への評価

私はこのような対立を煽るやり方により世論が二分されるようなことが続けば、日本の民主主義は危機に陥ると思う。何でも「賛成」か「反対」かではなく、「和」を以て行動する穏やかさを取り戻さなくてはならないと考える。

国葬の翌日、私はスリランカ大統領など各国要人と会談した。安倍元総理に対する評価は外交的にも経済的にも極めて高かった。安倍元総理への評価は実際はそうであるのに、国葬に反対する人々の影響により、米国CNNなどでは、「国葬は世論を二分した」というネガティブな部分が伝えられた。

これは安倍元総理の評価を落としかねないものであり、世界の方々からすれば、「日本はこれだけ功績のあった方の国葬にも反対する冷たい民族なのか」との誤ったメッセージにもなってしまう。

要人と会談する中、皆さんが必ず口にし絶賛したのが、安倍総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。これによってアジアと世界の安定と平和がもたらされているという評価で、戦後初めて日本の総理大臣が提唱した外交戦略が世界のスタンダードとなっていることからも分かる。

我々はこうした安倍外交の成果に立脚しながら、強い意志で引き続きリーダーシップを取っていかなくてはならない。もう我々の外交は日本だけのものではなく、アジアのため、世界のためのものになっている。安倍外交をさらに強化し、安倍元総理の功績に報い、世界平和のために尽くしていきたい。

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和田政宗

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