近付き渦巻く2つの銀河。ハッブルが撮影した“はと座”の相互作用銀河

【▲ 相互作用銀河「AM 0608-333」(Credit: ESA/Hubble & NASA, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, J. Dalcanton)】

こちらは「はと座」にある相互作用銀河「Arp-Madore 608-333」(AM 0608-333)です。相互作用銀河とは、すれ違ったり衝突したりすることで、互いに重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河を指す言葉です。

相互作用銀河のなかには潮汐力によって形が大きくゆがんだり、渦巻腕(渦状腕)が長い尾のように伸びていたりするものもあります。画像の2つの銀河は一見すると当初の形態を保っているように思えますが、画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)によると、Arp-Madore 608-333もまた相互作用によって微妙なゆがみが生じているといいます。ちなみに名前の「Arp-Madore」は、天文学者のHalton ArpとBarry Madoreがまとめた「A catalogue of southern peculiar galaxies and associations(南天の特異銀河および関連天体カタログ)」に記載されていることを示しています。

この画像は、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って取得された画像(可視光線と近赤外線のフィルター合計3種類)と、「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って取得された画像(可視光線のフィルター1種類)をもとに作成されています。DECamはその名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された画素数約520メガピクセルの観測装置で、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できます。DECamによるダークエネルギー研究のための観測は、2013年から2019年にかけて実施されました。

またESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡のACSによる観測は、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡や「アルマ望遠鏡(ALMA)」、それにハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る、興味深い天体の大規模なデータベースを確立させる取り組みの一環として実施されました。冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2022年10月3日付で公開されています。

関連:まるで数字のような相互作用銀河「Arp 147」ハッブル宇宙望遠鏡が撮影

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, J. Dalcanton
  • ESA/Hubble \- A Snapshot of Interacting Galaxies

文/松村武宏

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