<金口木舌>人形で想像する沖縄の物語

 英ロンドンのろう人形館「マダム・タッソー」。ガンジーやウィンストン・チャーチルといった歴史上の人物がまるでそこにいるような錯覚を覚える

▼マダム・タッソー東京には、吉田茂や坂本龍馬など日本の歴史に名を刻む人物らがたたずむ。残念ながら尚巴志など沖縄の歴史上の人物の姿はない

▼琉球史は体系的に学ぶ機会がなく、全ての王の名を知っている人は少ない。琉球・沖縄歴史に関する高校生の知識・意識アンケートでは、人物に関する正答率は低かった

▼沖縄県琉球創作人形協会(座間味末子理事長)が、琉球の歴代の王や聞得大君らの姿を人形で再現した。「琉球創作人形で伝える沖縄歴史夢物語PartⅡ」には、堂々とたたずむ王たち人形とともにそれぞれの功績などが紹介されている

▼本部町瀬底島で生まれ育った座間味さんは「平和を希求した琉球王朝の信念が人形に託されている」と語る。郷里の本部町に寄贈された本書の中の人形を通して、沖縄がたどってきた道とこれからの物語を想像してみるのもよい。

© 株式会社琉球新報社