「ベースアップは絶対していかなければいけないが…」止まらぬ値上げに試行錯誤する企業 “身を切る改革”で賃上げやインフレ手当を出す会社も

10月に入り、今年最大の値上げの波がわたしたちの財布を襲う一方、消費者の賃金は上がっていません。企業はどのように従業員の生活を守るのか、賃上げが難しい状況の中試行錯誤が続いています。

10月1日、静岡市葵区のスーパーでは、開店前に慌ただしく値札の張替え作業が行われていました。円安などの影響で続く物価高。10月に入り食品の値上げがピークを迎えています。

このインフレの大波の中で、新たな取り組みに乗り出す企業がありました。遠州鉄道は9月、13のグループ会社の社員に1人最高1万5000円の生活支援金を支給しました。臨時のいわゆる「インフレ手当て」に社員は?

<遠州鉄道社員>

「会社が燃料や資材が高騰して苦しい中だが、従業員に目を向けていただき、お金をいただくことがうれしかったです」

<遠州鉄道 丸山晃司社長>

「一緒にこの危機を乗り越えていこうねという気持ちを伝えて、金額よりもスピード優先で今回はやらせていただいた」

企業ごとに知恵を絞る物価高対策。専門家は物価と賃金、それぞれの上昇が分断されていると分析します。

<静岡経済研究所 恒友仁常務理事>

「企業の従業員一人一人の家計が厳しい状況に置かれている。そこを担保するには、ベースアップ=賃金上昇が必要だが、一方で企業サイドから見れば、材料価格仕入れ価格が上がってしまい、企業収益が圧迫されているので、なかなか賃金上昇には至らない結びつかない状況」

中小企業への影響は顕著です。

<竹田サンテック 竹田哲也専務>

「例えば金型をつくる電極材料がおよそ40%の値上がり。金型で使われている鉄は40%」

自動車の金型などを製造・設計する静岡市の企業です。品質を保つためにエアコンは24時間稼働。電気代は2021年の同じ月と比べ、およそ60%を超える値上がりです。

<竹田サンテック 竹田哲也専務>

「金銭的にも昇給のパーセントを下げたり、賞与のパーセントを下げたり、当然経営者の給料を下げて、本業でいかに安く、品質を保ちながら作れるか必死に考えないとならない」

企業内での“身を切る改革”でベースアップを何とか維持していますが…

<竹田サンテック 竹田哲也専務>

「ベースアップは絶対していかなければいけない、だけど実際できるのか。毎年厳しくなる。今の流れが終わるよという光が見えないのでそういうものを行政等に見せていただけるとありがたい」

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