【tvk根岸佑輔アナ】業界初のキャスティングも!? 50周年感謝ナイターの舞台裏

開局50周年を迎えたtvkが、局を挙げて臨んだ中継となった9月28日の中日戦。忘れられない時間となりました(本人提供)

 月に1回程度、tvkのナイター中継を担当するアナウンサーが、日々の出来事やエピソードをコラムでお伝えします。今回は根岸佑輔アナウンサー。

 2年連続でスワローズの胴上げを目の当たりにした9月25日、三浦監督は、試合後の囲み取材で唇を震わせながら「悔しくて仕方ないです」と言葉を絞り出しました。夏場以降の快進撃で、逆転優勝が期待できるところまで巻き返していただけに、悔しさは去年の比ではありませんでした。ベイスターズのチーム関係者やファンの皆さんも同じ気持ちだったのではないでしょうか。

◆まさかの中止からの…

 同じ日にベイスターズの2位が確定し、「クライマックスシリーズ(CS)から日本一」という次なる目標へ向けて気持ちを切り替え、再び歩み始めたベイスターズ。しかし、われわれtvkには「もう一つの大仕事」が残っていました。

 開局50周年を迎えたtvkが局を挙げて臨む特別な中継。9月28日の「tvk開局50周年 感謝のカタチナイター」です。

 当初は、tvkが初めてプロ野球の公式戦を中継した1972年4月8日と同じ日に合わせて予定されていましたが、コロナ禍で試合はまさかの中止。その幻に終わった冠試合が半年後、代替試合で実現したのです。

◆始球式は「saku saku」の

 3年ぶりのCS本拠地開催を決めたベイスターズの躍進を祝い、同時に50年間tvkのプロ野球中継を応援してくださった全ての方々に「感謝」を伝えるチャンスが再び巡ってきました。

 tvkナイター中継の歴史を紐解きながら、大洋ホエールズ、横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズ、横浜DeNAベイスターズ、全ての時代のファンに送る、われわれにしか出来ない特別な放送。その夜は、tvkを語る上で欠かせない番組「saku saku」に長く出演されていた木村カエラさんの始球式に始まりました。

 ほかにも、懐かしの中継映像やOBや往年のファンの方々によるメッセージVTR、ライブビューイング会場や横浜スタジアム内に設置されたtvkブースからの中継などなど…。たくさんの見どころを用意させていただきました。

 その中でも目玉となったのが「ゲスト解説のリレー方式」。野球的に言うならば「ゲスト解説の継投」でしょうか。

 試合を通して、通算128勝133セーブをマークした球団のレジェンド投手、斉藤明雄さんに解説をいただき、実況は根岸が担当させていただきました。そこへ、始球式直前の木村カエラさんが登場。明雄さんからの本気のアドバイスを実践し、本番でも見事な投球を披露しました。

◆レジェンド語る球団今昔

 一回から三回までは、名球会入りも果たした伝説の4番バッター松原誠さん。解説の明雄さんはチームを背中で引っ張り続け、後輩の面倒見の良さも抜群だった松原さんのことを「チームの親方的な存在」と表現されていました。

 その松原さんからは、数々のエピソードが語られました。ホエールズ時代の自由闊達(かったつ)で個性が際立ったチームカラー、ご自身の若かりし頃のプレーに関する話、ルーキーイヤーの牧と比較されることも多い桑田武さんの逸話、川崎球場から横浜スタジアムに本拠地が移転した時の思い出…。目の前の試合を忘れそうになるほど引き込まれました。

 四回から六回は大洋の中心打者として活躍、コーチとしては「マシンガン打線生みの親」とも呼ばれる高木由一さん。明雄さんに「アキオちゃん」と呼べるのは、この方くらいだと思います。

 相模原市役所職員から大洋戦士となった異色の経歴を持つ高木さん。友人に誘われて軽い気持ちでプロテストを受験し、たまたま調子が良くて川崎球場でホームランを連発したら合格してしまったといいます。そんなお話に「オーディション会場に家族と行ったら、付き添いの妹がスカウトされてデビューした」的な、どこかで聞いたアイドル誕生にまつわる都市伝説を思い出しました。

◆ハマっ子社長に期待しかない

 終盤の七、八、九回は横浜DeNAベイスターズの木村洋太球団社長が登場。レジェンドゲストを惜しげもなく3イニングずつで入れ替えるぜいたく過ぎる継投も、大トリで球団社長を放送席に呼んでしまうキャスティングも、おそらく業界初ではないでしょうか。

 今回のような出演は初めてという木村社長でしたが、とにかくお話が具体的かつ滑らかで、その頭の回転の速さには驚かされました。同時に、選手1人1人に寄り添い、チームだけでなく横浜の街全体の盛り上がりを視野に入れた未来を描いているのがよく伝わってきました。

 印象的だったのは「横浜という街の器に合った球団にだんだん近づいている」という言葉です。40歳と若く、幼い頃から野球が大好きなハマっ子で、ファンに近い目線も兼ね備えたリーダーである木村社長。今後のご活躍に期待しています。

◆ビールかけのイメトレ始めます

 試合は残念ながらベイスターズが敗れてしまいましたが、球団、そしてファンと共に歩んできた50年の歴史を私自身も実感する機会となり、これからもベイスターズとベイスターズファンに最も距離の近い地上波放送として、「らしさ全開」で突き進んで行こうと心に誓った一日でもありました。

 さあ、次なる舞台は10月8日からのCSです。もちろんtvkでも放送を予定しています。

 3年前はタイガースに敗れた本拠地開催のファーストステージを突破し、あの日、胴上げと力の差を見せつけられたスワローズに雪辱なるか。そして2017年以来となる日本シリーズで下克上を果たし、「横浜反撃」を掲げたシーズンを最高の形で締めくくれるか。勝利を信じ、「ビールかけ中継」のイメージトレーニングをぼちぼち始めようと思います。

© 株式会社神奈川新聞社