成田、川崎、西新井―神社仏閣最寄り駅巡り

 【汐留鉄道倶楽部】成田のお不動さま、で知られる千葉県成田市の「成田山新勝寺」を夏休みに参拝した。関東屈指の名刹でありながら、行ったことがなかった。

 成田へは京成電鉄とJRの2通りあるが、迷わず京成を選択する。京成は成田スカイアクセス線で成田空港に直結する特急「スカイライナー」が有名だが、創業の歴史は成田山詣での輸送から始まる。

京成成田駅に着いた快速特急

 自宅から近いこともあり、押上から乗車した。この駅は地下鉄半蔵門線や東武伊勢崎線の東京スカイツリー駅とも結ばれ、一大ターミナルと化した。はるばる京急の三崎口からやって来た快速特急の京成高砂行きに乗って旅が始まる。多くの川を連続して渡る。途中、京成立石を通過したが既に高架化の工事が始まっていた。この町はやがて高架と再開発で大変貌する。駅前の昭和感漂う、おいしいモツ煮込み店はどうなるのだろう。

 やがて京成上野から来た本線と合流する青砥で京成上野発の京成佐倉行き快速に乗り換えた。次の高砂までは複々線。伊勢崎線のような長距離の複々線で感じる醍醐味はないにしても標準軌ということもあり、めったに見ない広大な景色だった。このあたり、子どものころに沿線の店舗のCMが車内で流れていた記憶がよみがえった。高砂は京成金町線と北総鉄道・成田スカイアクセス線との分岐点であり、車庫もある大駅だ。

 江戸川を渡り千葉県へ。総武線とつかず離れずした後、どこかのんびりした風景を楽しんでいると、遠くに印旛沼が見えた。さすがに結構遠くに来たな、との印象。終点佐倉に到着し、最後に京成成田行きに乗り換え目的地の駅に着いた。

 押上から1時間程度。初めての乗車区間もあり、いい小旅だった。京成成田で下車すると近くにJRの成田駅。どちらも昔のJR長野駅のように寺の雰囲気を出しているのかなと思ったが、意外に地味な駅だった。

 目の前の表参道を通って新勝寺へ。途中名物のウナギを堪能したのは言うまでもない。

 

上:川崎大師駅ですれ違う京急電車。下:西新井駅で発車を待つ大師前行き東武電車

 これに先立つ5月には「厄除けのお大師さま」で知られる川崎大師に行った。ルートはもちろん京急大師線。品川や横浜方面からの直行はなく、本線が高架となっている京急川崎の地上専用ホームから出発する。京急らしい赤色がまぶしい。全てが京急川崎―小島新田の折り返し電車。かわいらしいローカル線かと思っていたら堂々4両編成で車掌も乗っている。さすが歴史ある路線だ。多摩川沿いに3つ目の駅が川崎大師。この駅からも参道が続き、包丁でまな板をたたきながら名物の飴を切るリズミカルな音が耳に残る。

 さらにさかのぼって今年1月の初詣は足立区の西新井大師へ。東武伊勢崎線の西新井から分岐する大師線でわずか1駅走行したら終点の大師前。距離1キロ、所要2分。路線名は京急と同じで、こちらも伊勢崎線との直通はなく1駅区間を行き来する。大師線は本来東上線の上板橋まで延ばす「西板線」が計画されていたが、実現せず大師前止まりとなったという。それ以来、東武は2つの幹線が分断されている。全線高架なのにワンマン運転、2両編成と、東京都内では東武らしからぬのどかな印象を持つ路線だった。

 私鉄で訪ねる「神社仏閣最寄り駅巡り」はこれからも続けたい。さらに東武大師線大師前のように「〇〇前駅」巡りはどうだろう。実際にどの程度本当に「前」といえるのか、足を運んで確認するのも面白いかもしれない。

 ☆共同通信 植村昌則

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