鈴木武蔵が、2年ぶりにJリーグの舞台に帰ってきた。
今年8月、2シーズンプレーしたベルギーのベールスホットから、ガンバ大阪へ完全移籍で加入した鈴木。28歳となった彼は、残留争いの渦中にあるチームで奮闘している。
そこでQolyは、森保一監督の日本代表でも9試合に出場、1ゴールを記録しているストライカーに単独インタビューを敢行!
前編となる今回は、2020年夏にベルギーのベールスホットへ移籍した経緯や、難しかった2年目、ベルギーで印象的だった日本人選手、さらには鹿島アントラーズへやってきた元同僚エレケとの友情などを紹介する。
(取材日:2022年9月21日)
「離れたくないという想いも強かった」札幌
――鈴木武蔵選手は昔から左手にテーピングされていますよ。あれは何か“願掛け”とかですか?
左手首に以前怪我して、結構ユルユルなんです。相手を抑えるのに左手を使うので、ちょっと固定しているだけですね。
願掛けでもなんでもないです(笑)。ただ手首がユルユルなので固定しているだけです。
――最近黒なのもチームカラーに合わせて?
そうですね。ユニフォームの色に一応合わせています。
――2020年、北海道コンサドーレ札幌からベルギーのベールスホットへ移籍しました。移籍の経緯をまず伺えますか?
自分の年齢的にも海外にチャレンジできる最後のチャンスだと思っていました。
やれるチャンスがあるならチャレンジしたいなと思っていて、オファーをいただき、札幌に承諾してもらって行きました。
――札幌が良いチームだっただけに、シーズン途中で離れるのは複雑な想いがあったのではと想像します。
いやぁそうですね。正直、離れたくないという想いも強かったです。でも、「このままでいいのか?」という自分の想いもすごくありました。
何か本当に、もっとさらに成長するためにはチャレンジしないといけないのかなと思いつつ、でも「札幌にはいたいし…」と思っていました。
――2020年8月、ベールスホットへ加入しました。まず感じたことは?
オランダ語、フランス語、英語が飛び交っていたので、「わー、難しいな」という感じですね。言語が難しいなと感じたのが第一印象でした。
――英語で話したらフランス語で返ってきたり?
さすがに英語で話したら英語で返ってくるので大丈夫でした(笑)。
最初は難しかったですけど、1年経った頃から何を言っているかはだいたい全部分かるようになりました。困ることはなかったです。
――ベールスホットというと、オーナーがサウジアラビアの王子様です。何かエピソードがあったりしますか?
あまり関わりがなかったので(笑)、そこは特になかったですね。
「相当難しかった」ベールスホット2年目
――ベルギーのリーグや選手の特徴はどのように感じました?
センターバックなんかは身長が190cm以上あってもすごく動けるという印象でしたね。個人の能力、身体的能力はとても高いなと。
大きくても素早く動ける選手が多かったです。
――そういうリーグの中で、FWにはまずどんなことが監督から求められましたか?
僕の特徴である背後へ抜け出すことだったり、そういったところを求められました。
※まさに裏への抜け出しで決めたセルクル・ブルッヘ戦のゴール!
――チームとしては、武蔵選手の加入初年度だった2020-21シーズンは素晴らしい戦いぶりでしたが(※一時首位に立つなど昇格1年目で9位)、逆に2年目はかなり苦しいシーズンだったと思います(※最下位で2部降格)。やっていてどんなところに難しさを感じました?
相当難しかったですね。前半10分以内に失点かレッドカードが出たりすることが多く、いきなり厳しい状況になってそこからなかなか立て直せなかったです。とにかく後ろにすごく重くて、「守って頑張ろう」という感じでした。
なかなか前のFWにボールが良い状況では来ません。クリアボールしか来ないという状況だったので、すごく厳しかったです。
――その中でも、FWとしてどんなことを心がけてプレーしていましたか?
とにかく「立ち上がり失点しないでくれ」という想いでやっていましたね。そのためには自分もできること、守備をしっかりしないといけない。
ただそれでも失点したり、レッドカードが出たりという状況が続いたので、難しかったです。
森岡亮太は「アンカーからトップ下までできる、すごく良い選手」
――ベルギーでは日本人選手との対戦も多かったと思います。印象的だった選手はいましたか?
森岡亮太選手は本当にベルギーでもすごく活躍していて、シャルルロワの中心選手として機能していました。改めて良い選手だなと思いました。
ポジショニングとかもうまいですし、ボールを受けてからの判断も素晴らしいです。パスを出す技術も高く、ゴール前でもクオリティを発揮できる。すごく良い選手ですね。
アンカーからトップ下までできる感じの選手。そういうイメージです。
――ベルギーリーグに日本人選手が多い理由はどんなところにあると思います?
おそらくステップアップを目指す選手が多いと思います。ベルギーからオランダのトップのチームへ行ったり、フランスのチームに行ったり。
ヨーロッパでプレーしていることによって選択肢が広がるので、そこを求めている選手が多いんじゃないかと個人的には思います。
――事前の準備として、これから行く選手たちに向けてじゃないですが、武蔵選手は何が必要だと思いますか?
サッカーの準備に関しては「行ける」「行けない」は自分の力ですし調子もあると思います。
目の前の試合を全力でやるとしか言えないですけど、それ以外であれば、やはり言語は多少なりとも勉強しておいたほうがいいと思います。最低限、英語はできて今後損はないんじゃないかなと。
――ベルギーで2年プレーして、自身の成長というのは今どのように感じています?
球際のところやメンタル面のタフさはだいぶ鍛えられたかなと思いますね。
――ベールスホット時代、現在鹿島アントラーズにいるブレッシング・エレケ選手とチームメイトだったと思います。どんな選手でした?
けっこう仲が良かったですね。僕は特にアフリカ人系の選手と仲が良かったので。
「ブレッシング」と呼んでいるんですけど、家も近くて、歩いて1、2分くらいのところに住んでいました。けっこう陽気な感じの選手ですね。
――鹿島に来るとなった時、連絡を取りましたか?
取りましたね。「日本楽しみ」と言っていました。「日本にいつか行ってみたい」みたいな感じで以前言っていたので。
【動画】ガンバ大阪FW鈴木武蔵が経験したベルギー…「ベールスホットでの2年目」に何が起きたのか
明日5日配信の後編では、V・ファーレン長崎でのブレイクや「ジャパネットたかた」髙田明氏のモノマネ秘話、札幌時代のミシャ監督とのエピソード、ガンバ大阪移籍の理由や現状を打ち破るために必要なこと、さらには同じリオ世代の南野拓実についてなどを聞いている。こちらもお楽しみに!
明治安田生命J1リーグで現在17位のガンバ大阪。今週末は10月8日(土)、首位・横浜F・マリノスとアウェイで対戦する。