栃木国体 空手道成年女子形 女王の風格漂う大野ひかるが3連覇 【大分県】

第77回国民体育大会(栃木国体)

空手道 成年女子形

10月3日 栃木県立県南体育館

決勝 大野ひかる 27.54-25.68 清水那月(群馬)

国体3連覇を達成した空手道の成年女子形の大野ひかる(大分市消防局)は安堵(あんど)の表情を浮かべた。「国体は大分県を背負って出場する唯一の大会であり、恩返しできる大会。絶対に優勝したかった」と語った。世界空手連盟が集計する世界ランキングで1位となった大野の国体の位置付けは、今も変わらない。「国際大会も国体も同じ。試合に出たからにはベストパフォーマンスを出す」と栃木国体でも圧巻の演武を見せた。

予選となるラウンド1で上位2人が勝ち上がったラウンド2では、日本代表選手がそろっていた。勝負どころと捉えた大野は、ここで得意の形「スーパーリンペイ」で27.74点をたたき出した。決勝の舞台ではプレッシャーを感じることなく「パープーレン」を披露し、27.54点の高得点で女王の貫禄を見せつけた。関係者は「一つ抜けた存在」と賛辞を送り、大野を小学生の頃から指導する佐藤重徳師範は「落ち着いていたし風格も出た」と愛弟子の成長を喜んだ。

圧巻の演武を見せた大野ひかる

大野の切れのある動作のたび、しんと静まり帰っていた会場の空気が変わる。演武が終わるとどよめきが起こる。連戦が続く国際大会で今大会のコンディションは万全ではなかったが、「今できることを最大限に出せた。応援してくれる方々のために結果を出せ、恩返しができた」と笑顔で振り返った。

「苦しい時期を乗り越えたから今がある」と大野は言う。目標としていた東京五輪の出場がかなわず、空手を辞めることも考えた。それでも踏みとどまったのは「自分の形をやり切ったのか」との思いだった。代表落選後は自分の弱点や細かいところに目を向けようと師範と一緒に「自分の形」を見直した。「今まで勝負に捉われ過ぎ、自分の空手に目を向けることができなかった。自分と向き合うことで、自分の形を進化させていくことができた」。その結果が東京五輪後の全日本選手権で代表選手を破って優勝できたことにつながり、その後の好結果に結び付いた。

30歳となった今年、競技者として円熟期を迎えた。大野は「自分が納得できる演武ができなくなったら辞めるとき。一番輝いているときに第一線を退きたい」と常々語っている。国体4連覇の期待は膨らむが、まずは12月の全日本選手権での優勝が当面の目標となる。

国体3連覇を達成した

(柚野真也)

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