「国体だけは勝たなければ」 諫早農高ウエイトリフティング部・上島春喜総監督 “思い出の地を花道に”

真剣な表情で指導する上島総監督。練習場は常に適度な緊張感が漂っている=諫早市、諫早農高専用練習場

 長崎の重量挙げ界を長年引っ張ってきた上島春喜・諫早農高総監督(59)が、来年3月で定年を迎える。退職後も指導を続ける予定だが、きょう1日に開幕する栃木国体が現役教師として臨む最後の大舞台となる。42年前、自身が高校3年生の時に初めて日本一になったのが1巡目の栃木国体だったという縁もあり「これ以上ない巡り合わせに感謝している」と本番を心待ちにしている。
 自身も諫早農高出身。日体大を経て、教員生活37年のほぼ半分に当たる19年を母校で過ごしてきた。毎年のように全国入賞者を輩出し、日本一になったのは4人。2009年の近畿インターハイは諫早農高36年ぶりとなる団体Vを達成した。
 何より結果にこだわる指導者だ。「いかに素質のある選手でも、けがや体調不良で優勝できないとなれば意味がない。逆に指導者がしっかりしていれば、実力が9位の選手にも賞状を与えられる」。子どもたちの努力を形に残してあげたい。だからこそ、練習では常に緊張感を持たせ、試合では自らが競技者として培ってきたノウハウを惜しまず還元してきた。

1980年栃木国体の少年男子67.5キロ級で優勝した上島総監督(本人提供)

 特に国体に対する思いは人一倍強い。自身も31歳まで計14回出場して優勝4回。一度も5位以内を外したことがないという安定ぶりだった。「長崎の教員に拾ってもらい、県の代表に選んでもらった。他の大会で負けることはあっても、国体だけは絶対に勝たなければいけない」。指導する立場になってもスタンスは変わらない。結果を追い求め、1971年以来ずっと入賞者を出している長崎チームの伝統を受け継いできた。
 栃木国体の重量挙げは6~10日に行われる。自らは数年前から支援コーチという一歩引いた立場で、次世代を担う指導者たちをサポートしている。
 「若いうちは失敗もあるかもしれないが、緊迫した場面を経験することで指導者も伸びていく。まず勝たないと何も語れない。もちろん、自分がやりたいという欲は誰もが持っているけれど、まだやれるうちに若い先生につないでいく方が大事。そうやって強い長崎を維持していかなければいけない」
 重量挙げの県代表選手は6人。すべて自身の教え子だ。彼らが今の力を存分に発揮して結果を出してくれれば…。功労者にとって、それは最高の花道となる。


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