「幼稚園が安全な場所になるよう誠心誠意尽くす」静岡・園児バス置き去り死事件から1か月 “信頼の回復”の課題は残されたまま

静岡県牧之原市のこども園で通園バスに園児が置き去りにされ死亡した事件から10月5日で1か月になります。園の職員らは5日、置き去りが起きた現場で黙とうを捧げました。信頼の回復へまだ、課題は残されたままです。

事件から1か月。バスの駐車場では園児の死亡が確認された午後3時34分ごろ、こども園の職員らが線香を手向け黙とうを捧げました。

<川崎幼稚園 増田多朗理事長>

「…」

川崎幼稚園の新理事長はカメラの前で無言を貫きましたが、園は職員一同としてコメントを発表しました。

<職員一同のコメント>

「今回の事故を期に転園していった子どもたちの姿がないことを見て、被害の重大さを改めて痛感しております。川崎幼稚園が安全な場所になるよう、誠心誠意尽くしてまいります」(原文ママ)

9月5日、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、この園に通っていた女の子(当時3)が通園バスの中に約5時間にわたり、取り残され、重度の熱中症で死亡した事件。

<増田立義前理事長>

「亡くなられた園児及びご遺族に心よりお詫び申し上げます」

園は事件の原因について、4つの人為的ミスが重なって起きたとしています。

▼70代の女性職員は通園バスに乗っていた全員の降車を確認せず

▼急きょ運転手をつとめた当時の理事長は車内を確認せずに施錠

▼クラスの補助職員は女の子の「登園」の情報を見逃し

▼担任などは女の子が欠席と思い込み保護者などへの確認を怠っていました。

<篠原大和カメラマン>

「事件発生から1か月がたちました。園では4重チェックで園児の登園確認をしているということです」

園は毎朝、園児の出欠を4回チェックするなどとした新たなマニュアルを作成し、10月3日から園児の受け入れを再開しました。

<川崎幼稚園児の保護者>

「1か月という時間が掛かってしまったが(園が)再開できて本当によかったと思う」

今回の事件を受け、川崎幼稚園が臨時休園をしていたおよそ1か月の間、子どもたちは自宅待機や別の園に通うことを求められました。保護者の間では、園の再開を待ち望む声が相当数あったのも事実です。

<川崎幼稚園児の保護者>

「今までは、市内の別の保育園に行っていたが、今までの幼稚園に通い始めたら、明るいというか、元気があるというか、何か普段は違う感じがする」

一方で課題となっているのは「信頼の回復」です。事件当時、川崎幼稚園に在籍していた園児167人のうち、22人の園児の保護者から転園の申し込みがあり、このうち16人の転園先が決まっています。

<寺坂元貴記者>

「川崎幼稚園は再開にこぎつけたものの、事件の舞台となってしまった通園バスについては、運行の見合わせが続いています。バスは駐車場に置かれたままの状態です」

川崎幼稚園は職員のシミュレーションが十分ではないことなどから、通園バスの再開については未定としています。牧之原市の杉本基久雄市長は5日、独自の再発防止策として、市内の保育施設などのバスに園児でも押しやすい非常用のクラクションボタンを設置する方針を明らかにしました。

<牧之原市 杉本基久雄市長>

「二度とこのような事故を起こさない、安心安全な保育を行っていただきたい」

© 静岡放送株式会社