「支えてくれる人いれば“生きる選択”する人が出てくる」ALS患者が作ったグループホームの使命とは【現場から、】

呼吸や手足に必要な筋肉が徐々にやせ、力がなくなっていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)。この病気と闘う静岡県富士宮市の女性がつくったグループホームは、最期まで生き抜く患者と家族を支え続けています。

富士宮市にある「ケアサポート志保」。医療的ケアを必要とする人に特化したグループホームです。

<清しお子さん>

「こんにちは、よろしくお願いします」

<大村さん>

「よろしくお願いします」

立ち上げたのは、富士宮市に住む清しお子さんです。清さんは、体を動かすのに必要な筋肉が徐々にやせ、力がなくなっていく難病・ALSの患者です。全国に1万人、静岡県内に260人の患者がいますが、原因は不明で、根本的な治療法は見つかっていません。

<清しお子さん>

「支えてくれる人がいれば生きる選択をする人が出てくると私は考えます」

家族への負担を考え、生きることを諦めてしまう人を減らしたいという思いから、施設を立ち上げました。この日入居したのは、静岡市に住む大村久恵さん。3年ほど前から、呂律が回らなくなり、2年前、ALSと診断されました。

<看護師>

「基本的に『うん』とか肯定するときはどんな感じでわかりますか?」

<大村さんの娘・真樹さん>

「教えてはあるんですよ。こうやってやれば、はい。いいえ。足踏みをするときは、はい」

娘の真樹さんが自宅で介護をしていますが、症状が進んだことで1人で見ることへの不安と恐怖からグループホームに預けることを決めました。

<大村さんの娘・真樹さん>

「体力的にすごくきつくなっていて寝る時間もだいぶ短くなってきていて、昼間の仕事が耐えられなくなってきちゃった」

<清さん>

「漢字じゃなくて、ひらがなかカタカナで大丈夫よ」

<真樹さん>

「なに?どうした?お腹が直角で大変?」

<清さん>

「もしかしたら子ども用の文字練習を買った方がいいかもしれない」

<看護師>

「いつも決まったものがあるから、トイレに行くとか」

大村さんのストレスを減らし、居心地のいい場所になるよう、考えます。

<大村さんの孫・琉月さん>

「普段はちょっと厳しいときもあるけど優しくて、誕生日の日には服買ってくれたりとか、優しいおばあちゃんです」

<大村さんの娘・真樹さん>

「自分の部屋みたいに過ごしやすくすればいいから。なかなか快適?よかったですね」

しかし、3日後。大村さんは容態が急変し、搬送先の病院で亡くなりました。

<大村さんの娘・真樹さん>

「(看護師が電話で)酸素の値がすごく低いので、救急車を呼びたいと。本人は苦しくないと言っているけどと。酸素の値が低くても今までやってこられちゃったので、様子を見てくださいと言ったんですよ。でも、もう様子を見るとかそういう状態じゃないんでと」

Q.グループホームに入居してよかった?

「家でそのまま、亡くなっちゃって、もっと後悔した可能性ももちろんあるし、的確な判断をして救急車に乗せてくれた人がいたから最期会えたのもあるし、あれがベストだったと思っています」

<清しお子さん>

「(大村さんは)もっと早くに入居できていれば、もしかしたら無理なことをしないで済んだからもうちょっと永らえたかなとも思いますが、それだけはわかりません。私だって、こうやって元気ですけど、あした急に呼吸が止まるという可能性もなきにしもあらずですから」

それでも、患者と家族が悔いのない最期を迎えられるよう、支えることが使命だと考えています。

<救急車を呼んだ看護師>

「私たちも対応が後から良かったのか正しかったのかと考えることはありますが、どのような形で最期が来るかわからないので、一瞬の判断を間違えずにこれからも介護・看護をしていきたいと思います」

清さんは、誰かの手助けを受け入れ、諦めずに生き抜く人が増えることを信じています。

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