円安で保険料が高くなる「ドル建て保険」。円安が進行するいまどうすべきか

生命保険は、万が一の場合に家族が保険金を受け取れる死亡保障です。保険料が安い保険は、亡くなった時だけお金を受け取れる掛け捨ての保険ですが、「掛け捨てはイヤ、貯蓄性も兼ね備えた保険がいい」、と考える人は少なくありません。

しかし、超低金利の円建て保険では貯蓄性をあまり期待できません。そこで外貨建て、特にドル建ての保険を検討、もしくはすでに加入している人も多いのではないでしょうか。

ドル建て保険で気を付けなければならないのが、為替レートの動向です。
では、円安ドル高が進む昨今、どのように対応すればよいのでしょうか。


ドル建て保険の種類

ドル建て保険とは、保険料の支払い、保険金や解約返戻金などの受取りまで、すべてドルで行う保険商品です。貯蓄性の高いドル建て保険は、おもに3つの種類があります。

終身保険

終身保険は、保障が一生涯続く保険です。いつ亡くなったとしても、その時には家族が保険金を受け取れます。つまり、いつかは必ず保険金を受け取れる保険なので、掛け捨てではありません。

掛け捨てではない保険の場合、加入年数に応じて解約返戻金が増えます。この仕組みを利用して、ある程度の解約返戻金が受け取れる時点で解約し、自分でお金を使うこともできます。たとえば、老後資金にする方法も考えられます。

養老保険

養老保険は、契約期間が満期になると満期保険金が受取ることができ、契約期間中に死亡した場合は死亡保険金が支払われる保険です。

満期保険金と死亡保険金は同額なので、一定期間の死亡保障にもなり、貯蓄もできる保険です。

個人年金保険、変額個人年金

個人年金保険は、老後資金の準備のための保険です。たとえば、60歳まで保険料を払い、それ以降10年間にわたって年金形式でお金を受け取る、というような契約にします。

保険に加入すると保険料が所得控除の対象になり、節税につながりますが、生命保険と個人年金保険は別枠なので、貯蓄目的で加入する人も多いかもしれませんね。

個人年金保険のうち、運用実績によって将来受け取る年金額が増やせる可能性がある、として販売されている年金保険が、ドル建変額個人年金です。

60歳まで保険料を払い、保険会社が運用して年金原資を形成します。運用がうまくいけば年金原資が増えて年金額が増やせます。逆に損失が出れば元本割れの可能性がありますが、支払った保険料分は保証される商品もあります。

ドル建て保険に加入するメリット・デメリットは?

ドル建て保険は、保険料をドルで払い、保険金や解約返戻金をドルで受け取る仕組みです。実際には、保険会社に保険料を払う時には日本円ですが、保険会社でドルにして運用する、という流れになります。

では、ドル建て保険のメリットはどのようなものがあるでしょうか。

ドル建て保険に加入するメリット1:高利回りが期待できる

日本円より金利が高いドルで運用されるので、運用効果を見れば円建て保険より高い利回りが期待できます。

また、保険料は保険会社が定めた予定利率によって割り引かれています。運用益が高いと見込まれればその分予定利率も高くなり、保険料も安くなります。つまり、同じ保障内容であれば、円建て保険よりドル建て保険のほうが、保険料が安くなるわけです。

ドル建て保険に加入するメリット2:リスク分散になる

ドル建て保険に加入するということは、ドル資産を持つということです。日本円だけで資産を持つと、円安になると資産全体の価値が下がりますが、ドル資産も持っていることでリスクの分散になります。

一方、ドル建て保険の注意点もあります。

ドル建て保険に加入するデメリット1:為替リスクがある

最も気を付けたいのは為替リスクです。今は円安ですが、将来は円高になる可能性もあります。保険金を受取るときに円高になっていたら、円安時と比べると受取額が大きく減ってしまいます。さらに、支払った保険料よりも受け取りが少なくなる、元本割れとなる可能性も高くなります。

ドル建て保険に加入するデメリット2:手数料がかかる

また、ドル建て保険は、日本円で払った保険料を外貨にかえて運用します。さらに、保険金の受取り時にもドルから日本円にかえます。

ドルと円を両替するたびに為替手数料がかかり、この手数料は契約者負担になります。
つまり、円建て保険よりも高いコストがかかるのです。

ドルの利回りが高くても、為替リスクや手数料の影響で、高利回りの恩恵が充分に受け取れない可能性があることに注意してください。

「元本保証」とうたっていても、それは外貨ベースですから、その点にも注意が必要です。

ドル建て保険に加入するなら一括払いではなく、ドルコスト平均法で

ドル建て保険は円建てよりも保険料が割安、とお伝えしましたが、その金額は為替レートの影響を受けます。

たとえば、月払い保険料が100ドルの場合、1ドル100円であれば1万円ですむところ、円安になって1ドル140円なら1万4000円払わなくてはなりません。

つまり、円安の場合、払い込む保険料は高くなります。しかし、受取る保険金などは増加します。

逆に、円高なら払い込む保険料が安くなるので、少ない日本円で大きな保障を持つことができます。一方で受取る保険金などは減少してしまいます。

ですから、為替相場の影響を大きく受ける一時払いは、円安の今はあまりおすすめできません。為替リスクをおさえるなら、「ドルコスト平均法」がいいでしょう。

ドルコスト平均法とは、定期的に日本円で同じ金額ずつ買う方法で、高いときには少なく、安いときには多く買うことができます。月払いなどにすると、ドルコスト平均法の効果で、長期運用することで保険料の平均額を実質的に下げる効果が期待できます。

契約時に円安であっても円高であっても為替相場の影響は少ないといえるでしょう。

ドル建て保険にすでに加入している場合は、円安の今どうする?

では、すでに加入している場合はどのようにしたらいいのでしょうか。

解約返戻金をチェック

円安だからといって慌てて保険を解約する前に、まずは解約返戻金がいくらになっているのかチェックしましょう。加入してからの期間によっては、解約返戻金が払込保険料よりも高くなっている可能性があります。

為替動向は流動的で、今後の円高局面に備えていったん利益を確定するのも選択肢のひとつでしょう。

ドルで受け取る、ドルで据え置く

保険商品によっては、解約返戻金や保険金を日本円ではなくドルのまま受取ることができるものもあります。また、満期になってもすぐに受け取らず据え置きができる保険もあります。

しばらく様子を見たいという場合は、ドル資産のままおいておくのも一案です。

ドル建て保険ならではのリスクに注意しつつ、運用益を確保できるよう情報収集していきましょう。

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