読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、会社員の女性。家族は38歳会社員の夫と4歳子ども。最近約6,400万円のローンを組んだばかりで、これから支払いが始まるため将来が不安になってきたといいます。どんな対策が考えられる? FPの當舎緑氏がお答えします。
来年から住宅ローンの支払いが始まるため、不安です。
私は36歳、夫38歳、共に会社員。子どもは1人で4歳です。子どもはいずれ中学受験をさせる予定です。
物件価格は6,780万円。手付金の1割として680万円を払込済みなので、借入額6,400万ほどになりそうです。金利は0.45%、返済期間は35年です。これに加え、管理費修繕費が月3万6,000円がかかります。
現在、現金がそれなりに貯まったので、ジュニアNISAとつみたてNISA×2人分を上限で積み立てています。他に海外の積立投資(今月まで月11万、来月から5万積み立てに減額)をしています。他にやったほうが良い貯蓄方法など、知りたいです。
私も夫も定年まで働くつもりでいます。
【相談者プロフィール】
・女性、36歳、会社員 ・夫:38歳、会社員 ・子ども:4歳
・住居の形態:現在は賃貸,来年から分譲マンション(関東地方)
・毎月の世帯の手取り金額:64万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:200〜300万円
・毎月の世帯の支出の目安:40万円(家賃込み)
【毎月の支出の内訳】
・住居費:8万3,000円
・食費:7万円
・水道光熱費:2万5,000円
・教育費:5万円
・保険料:3万円
・通信費:1万円
・お小遣い:5万円
・その他:5万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:5万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:200万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円
・現在の投資総額:1,800万円
・現在の負債総額:6,400万円(来年から。)
・退職金:夫1,500万円,妻700万円ほど
當舎:相談者は、貯蓄は月5万円に加えボーナスからも200万円程度、合計で年間260万円が家計で貯蓄できていることから、とても堅実な家計運営をされているご家庭だと言えます。将来的に不安はあまりないと言いたいところですが、今後の貯蓄のためにできることもあります。考えられるポイントとしては「住宅ローンの返済の方法」と「子どもの教育費」、そして「老後資金としての確定拠出年金」の3つです。具体的に見ていきましょう。
借りたあとも見直しを
今の住居費は8万3,000円ということですが、住宅購入をされたことで、確実に支出は増えます。以下の表は、筆者が計算した2パターンの新規借り入れシミュレーションです。
このように、35年0.45%で6,400万円を借り入れした場合、ボーナス払いを入れるかどうかで毎月の返済額も多少変わりますが、いずれにせよ、来年は確実に負担が増えますし、そもそも0.45%の金利が35年間も続くかどうかはわかりません。さらに管理費修繕額が加わると負担は倍増します。住宅ローンは借りた後には見直しすることをぜひ考えていきましょう。
住宅ローン返済の効果は貯蓄と同じ
今回借りた住宅ローンのタイプが「元利均等返済」か「元金均等返済」なのか、金利が「固定金利」か「変動金利」かなど、詳細についてはわからないため、具体的な対策は申し上げられません。ただ、住宅ローンの返済が始まった後は、貯蓄で少しでも繰り上げ返済するか、借り換えをするかなど住宅ローンの見直しをすることが、貯蓄と同様の効果をもたらすことは覚えておいてください。
変動金利の住宅ローンは、経済状況により一気に金利が上昇する危険性があります。どの金利上昇段階で借り換えをするかどうかは個々人の判断となりますが、一般的には「金利が上昇するときに借り換えすること」が変動金利の住宅ローンの注意点となります。参考まで、長期固定金利の住宅ローンであるフラット35のウェブサイトをご紹介します。
あくまでも試算ですが、2,000万円を「元金均等返済」で借りると「元利均等返済」よりも、約30万円総返済額が少なくなります。すでに申し込まれた住宅ローンに対し、35年返済で定年までご夫婦で働き、しかも夫婦ともに退職金があることから、そのまま見直しせずとも返済できないという状態にはならないでしょう。ですが、子どもの中学受験が終わって、その後の進路がある程度確定した段階などで、定期的な見直しは大切です。貯蓄も大事ですが、住宅ローン返済を工夫する効果はとても高いといえます。
教育費と住宅ローンのダブルパンチが重なる生活をイメージしよう
相談者の家計の中で不安要因は、今後引っ越しした後に増加が見込まれる住宅費と教育費の2つの費用です。通常、子育て世帯が順調に貯蓄できるのは子どもが小学生までですが、中学受験すると考えるとその時期が前倒しとなります。
日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査を見てみると、高校から大学へ進学した場合の費用は一人あたり942万円かかるそうです。教育費を、現時点での貯蓄総額2,000万円と投資総額1,800万円など、すでにある資産から支出して貯蓄を継続するのか、それとも貯蓄資産を温存して月々の収入の中から支出するのかを考えておきましょう。
持ち家にかかる費用は住宅ローンだけでなく、火災保険や地震保険、固定資産税など多岐にわたります。来年、分譲マンションに引っ越したあとの住宅取得にかかる諸費用と引っ越し代を考えれば、住宅費の増加は年間100万円以上。子どもが4歳ですから、小学校高学年になるまでの6年間で子どもの教育費を準備しつつ、住宅取得の費用というダブルパンチに家計が耐えられるよう、まずは家計を整理しましょう。私立受験のための費用や私立中学の費用への公的支援はありません。まずは、来年引っ越し後の家計が落ち着いてから、月々「いくら」「何のために」貯蓄に充てられるのかを算出しましょう。
老後資金の準備は長期が基本
既に行っている投資方法はジュニアNISAとつみたてNISAということですが、今後の貯蓄方法のひとつとして、確定拠出年金をぜひ組み入れてみましょう。確定拠出年金を利用する最大の目的は老後資金のためです。
勤務先に企業年金などがない厚生年金の被保険者の場合には、月2万3,000円を拠出できます。拠出限度額については、勤務状況によって異なりますので、厚生労働省のウェブサイトで、限度額を知っておきましょう。2022年10月から企業型確定拠出年金については改正もありますので、勤務先ごとの加入できる制度を確認してみてください。
iDeCoのメリット
今後、住宅ローン控除による所得税の減税はありますが、確定拠出年金に加入することで、以下のような恩恵を受けることができます。通常の投資では、投資額や運用益に対して所得税や住民税がかかってくることを考えれば、メリットはとても大きいといえます。
■拠出時
非課税(加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除〈小規模企業共済等掛金控除〉、「iDeCo+」を利用し事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入)
■運用時
・運用益:運用中は非課税
・積立金:特別法人税課税(現在、課税は停止されています)
■給付時
1.年金として受給:公的年金等控除
2.一時金として受給:退職所得控除
個人型確定拠出年金iDeCOのサイトでは、実際加入した場合のシミュレーションができますので、試算してみました。
引っ越し後、頑張って住宅ローンを返済しても、病気や災害時など緊急の費用は手元に置く必要もありますし、持ち家になれば修繕費やリフォーム代は自分持ちです。賃貸とは異なる支出に慣れて、第一に家計のリバランスをし、その上で貯蓄を始めましょう。